「悪事をもみ消す自浄作用」が働いている

後日、このような返信があった。

代表取締役からの返信
筆者提供

代表自らが違法労働を示唆、容認する内容を読んだ時、私は「この会社ダメかもしれない」と悟った。案の定、解雇は撤回されず、そのまま裁判に突入。2年間にも及ぶ法廷紛争を繰り広げた。

ちなみに、裁判前に所属していた会社の親会社(上場企業)へも解雇撤回と違法労働の是正を求めたのだが、監査役からは「調査したけどわからなかった。納得できないのなら裁判で確認されたらどうですか?」と口頭で言われたことがある。つまり、やれるもんならやってみろ、というわけだ。裁判は結果的に会社が折れ、4000万円で和解した。

ビッグモーターの経営体制をめぐっては、非上場のためガバナンスが緩かったという指摘が頻繁にされている。たしかにそういった側面もあるかもしれないが、ブラック企業の最前線にいた身からすれば上場云々は関係なく、ブラック企業という生き物そのものに「悪事をもみ消す自浄作用」が働いているように感じてしまう。

求人サイト上はホワイトだが…勤め先から4700万円を勝ち取った男が教える「隠れブラック企業」3つの特徴〉でも述べたが、労働問題が起きるような企業は、社内ホウレンソウが正常に機能していない。それどころか、歪曲わいきょくした情報が出荷される可能性が高い。

減給を伴う降格は法的に認められない可能性が高い

なぜならサラリーマンが大切にしているのは、極論、会社ではなく自分だからだ。自分が不利になったり責任を問われたりするような報告をわざわざする必要がどこにあるだろうか。隠蔽いんぺいできる可能性があるなら、そっちに流される社員が現れても何ら不思議ではない。降格などの懲罰が横行しているのなら尚更だろう。

見方を変えるなら、お金の誘惑に負けて現場社員が不正に走ったとも解釈できる。だからといって、降格などの制度面だけに責任転嫁する論調は間違っていると私は考えている。実際に手を下したのは現場社員であり、生活のため家族のためなどは、取引先やお客からすれば何の言い訳にもならない。

同調圧力の根にある「教育の問題」については〈なぜ「権利を使う人間」を叩くのか…不当解雇で計4700万円を勝ち取った私を「当たり屋」と呼ぶ日本人の闇〉で詳しく述べた。また、この記事で私は「会社と戦うことに関する情報不足」を指摘している。言い換えるなら、日本の労働者は労務に関する知識があまりに足りない。

ビッグモーターの問題も同じで、例えば懲戒処分ではない減給を伴う降格は、法的に認められない可能性が高い。よって恐怖政治を振りかざされても委縮する必要はなく、ましてやゴルフボールで顧客の車に傷をつけるなどという一線を超えた行為には堂々と「それは間違っていると思います」と会社に盾突けばよい。