日常生活に大きな影響を及ぼす強迫性障害
2つめの強迫性障害は、意志に反して頭に浮かんでしまった考えが頭から離れず(強迫観念)、その強迫観念で生まれた不安を振り払おうと何度も同じ行動を繰り返してしまう(強迫行為)ことで、日常生活に影響が出てしまう状態を指しています。
例えば、
「不潔に思い(強迫観念)、過剰に手を洗う(強迫行為)」
「戸締まりがしっかりできているか不安に思い(強迫観念)、何度も確認する(強迫行為)」
「手順どおりに物事を行わないと不吉なことが起きるという不安から(強迫観念)、常に同じ方法で仕事や家事をする(強迫行為)」
「同じ状態になっていないと不安という思いから(強迫観念)、物の配置・レイアウトにこだわる(強迫行為)」
などが挙げられます。
「不安を生じる事態を抑えられる」と学習した行動(=強迫行動)を無意識に繰り返すようになり、その行動が安定した日常生活を阻害するほどエスカレートしてしまうわけです。
闘争か、逃走か、フリージングか
そもそも不安とは、危険が迫ったときに適切に緊張状態を高め、身を守るために起こる、生体としてはごく自然な反応です。
こうした場面では、自律神経の調節機能が働き、心拍数や脈拍や発汗の増進などが生じ、「闘争か逃走か(Fight or Flight)」と呼ばれる、自己防衛反応、つまり「危険となる対象に立ち向かうか、それとも逃げるか」のいずれかの行動をとりやすい状態がつくられます。
なお、「闘争か逃走か」の反応の他に、第三の反応として「フリージング(凍結する、固まる)」という反応も挙げられます。これは危険に対して自己防衛反応をとることができない状態を意味します。恐怖場面にさらされて何かしらの行動をとったものの、その行動が事態を好転させることに結びつかない経験を繰り返すと、「何をしても状況は変わらない」ことを学習することになります。
恐怖や不安の表情が、不安をさらに高める
闘争、逃走、フリージング……不安への反応はさまざまですが、ASD者の中には不安障害を抱えている人が多くいます。
では、ASD者が不安を高めてしまうのは、どんな状況なのでしょうか?
1つは、恐怖や不安の表情を目にしたときです。例えば、恐怖の表情を浮かべた顔画像を提示すると、ASD者にさまざまな変化(縞模様のコントラストへの感度が上がる、わずかな角度のズレも認識できるようになるなど)が生じます。
このときfMRIで脳の活動を計測すると、恐怖や不安といったマイナスの情動に深く関わる脳の扁桃体の神経活動が強くなることが報告されています。