「良い医師と良い病院」を探すにはどうしたらいいか

①を選ぶ場合、大事になるのが、医師と病院の選び方です。多くの人は、「病院に行けば、最善にして最新の治療が受けられるはず」と考えていますが、残念ながらそんなことはありません。病院によって治療の方法が異なれば、医師によって治療方針も手術の腕も違います。「通いやすいから」などの理由で選ぶと、のちのち自分や家族が後悔する可能性は極めて高くなります。

では、どのように医師や病院を探すとよいでしょうか。

一つは、その病院の病気別の手術成績をチェックすることです。病院のホームページなどに公開されています。術後のフォローがよいかを調べることも大切です。今の時代、名医の治療を受けるには、「お金を持っているか」よりも「正しい情報を持っているか」がものをいいます。

もう一つは、実際に診察を受けて、「この先生にお願いしたい」と希望を持てる人かどうかを見極めることです。自分でいろいろとデータを調べ、それを並べて医師に話を聞くのもよい方法です。熱心に話を聞き、そのうえで最善と思われる治療方針を示してくれればよい医師ですし、「患者が医者に指図をするな」などと怒ったり、不機嫌になったりするようならば、命をゆだねる価値のない人物と判断できます。

病院で携帯電話を使用している男性医師。メディカルヘルスケアとドクターサービス。
写真=iStock.com/NanoStockk
※写真はイメージです

治療しても延ばせる余命には限界がある

②のがんとともに生きる治療法を選んだ場合、普段通りの生活をしながら、一日一日をやりたいことをして生きられます。がんという病気は、積極的な治療をしなければ、死ぬ少し前まで普通の暮らしができる病気です。また、自分の余命もだいたいわかるので、「そのときまではやりたいことをやり尽くして、あの世に逝こう」と開き直ることもできます。

しかし、「もしかしたら、寿命が短くなるのではないか」と不安にもなるでしょう。実のところ、治療を受けたほうが長生きか、受けないほうが長生きか、その答えはわかりません。日本の医学界が大規模な比較調査を行っていないからです。ただし、②を選んだ場合、病院のベッドに縛られずに済むため、健康寿命(日常生活が制限されることなく生活できる期間)は、①よりも確実に延ばせるでしょう。

皆さんは、「がんはとても苦しい病気だ」と思い込んでいませんか。実は、がんは治療するから、いろんな意味で苦しい病気になります。60代で発症し、「治療をしなければ余命1年」と宣告された場合、手術を受け、抗がん剤治療を受ければ、2年は寿命を延ばせる可能性があるかもしれません。しかし、どんなに治療を頑張っても、おそらく、それ以上は余命を延ばせないでしょう。