上司を悩ますモチベーションゼロの若手部下。なぜ彼らは自分から動かないのか。「問い」が組織の創造性をいかに高めるか、をテーマに研究を続けながら、様々な企業に助言も行っている安斎勇樹氏は、「質問術」によって、動く部下に変えることができると説く。学びのサイト「プレジデントオンラインアカデミー」の好評連載より、第1話をお届けします。

※本稿は、プレジデントオンラインアカデミーの連載『「君はどう思う?」で人は動き出す 優れたチームリーダーがやっている最高の質問20』の第1話を再編集したものです。

どんな人間も必ずモチベ―ションは持っている

言えばやってくれるけれど、なかなか自分から動いてくれない――部下に対してこう悩むチームリーダーは多いでしょう。

「指示待ち部下」には2つのタイプがあります。ひとつは、モチベーションはあるけれども自分からは行動しないタイプ。

モチベーションを持ちつつも受動的になっている部下は、「やり方に自信がない」「自分から動いていいかわからない」「自分の判断で動いた結果うまくいかなかったら叱責されるのではないか」という不安や恐れがストッパーとなっている可能性があります。心の内には存在するモチベーションが外から見てわかるアクションにまで至っていないのです。

彼らに対しては、上司が、「やっていいよ」という許可を明確にしたり、「うまくいかなくても大丈夫だからやってごらん」と伝えたりしてストッパーを外し、背中を押してあげることが有効です。

もうひとつは、一見すると全くモチベーションがないタイプです。前者の場合はまだ軽症ですが、こちらは重症だと言えるでしょう。企業でセミナーを開催すると、「やる気もこだわりも全くない部下がいて困っている」とマネジメント層から頻繁に相談を受けます。

ただ、実はモチベーションというのは、「ゼロかイチか」ではありません。哲学者のジョン・デューイは、精神的疾患で無気力になっていない限り、どんな人間も必ず「何かをやってみたい」という内なる「衝動」を持っていると説いています。つまり、グラデーションは確かにありつつも、人間は必ず何らかのモチベーションを持っているということなのです。

「快」が「不快」を総量で上回るように導けば、部下は自分から動き出す

ここで改めて、モチベーションとは何かを見ていきましょう。モチベーション(動機付け)の一番シンプルな定義は、「快に接近し不快から回避したがること」とされています。

例えば、「楽しそう」「褒められたい」は快への接近で、「怒られたくない」「めんどくさい」は不快からの回避です。また、「もう一杯飲みたいけど、明日は朝早いし二日酔いにはなりたくないな」は、短期的な快への接近動機と長期的な不快からの回避動機がせめぎあっている状態だと考えられます。