3分で済みそうな指示を、言い方を変えてくどくどと説明し続ける「迷惑な上司」。心理学博士の榎本博明氏は「頭の中が整理できておらず、話すことを自分でまとめきれていないから。そうした上司の話を止める、とっておきの一言がある」という。学びのサイト「プレジデントオンラインアカデミー」の好評連載より、第1話をお届けします――。

※本稿は、プレジデントオンラインアカデミーの連載『上司、部下、同僚、家庭……あらゆる場面に対応 無神経な人に振り回されず、こっそりあやつる方法』の第1話を再編集したものです。

無神経な人ともうまくやっていく能力とは?

昔から人が抱える悩みの大半は「人間関係」と言われます。馬が合わない人や困った人、無神経な人に煩わされることの多いのが職場。しかしビジネスパーソンは、そんな人たちともうまくやっていける人間関係能力が求められます。

職場や家庭にいる面倒くさい人や困った人、無神経な人への対処のしかたでもっとも重要なのは、衝動的な反応はしないこと。相手の性格や思考回路を観察して、それに応じた対応をすることを心掛けなければなりません。

日本人は間柄を重んじる国民ですから、たとえ相手に非があることでも、真っ向から戦ってしまえば自分の評価を落とします。

意見を通そうと思うなら、戦うより相手との間柄を良好にする。そのためには相手の心理状態を理解することが重要です。

やっかいな人物を見ると、その人固有の性格や特徴のように感じるかもしれませんが、対応次第で変わっていきます。厄介な人物はいくつかのパターンに分類することができますが、それぞれの心理メカニズムを踏まえることで関係性を壊すことなく、むしろ自分に有利な関係へと変えていくことができます。

話の長い上司には、話が長くなる理由がある

ではさっそく今回のテーマに入りましょう。第1回の話題は話の長い人への対処法です。

3分で済みそうな指示を、言い方を変えてくどくどと説明し続ける上司。あなたの職場にもいるのではないでしょうか。

話の長い人にはいくつかのパターンがあります。

一つ目は、相手が強い不安を抱えているパターン。このパターンの人は自分の話がちゃんと理解されているかどうか気になるあまり、同じ話を繰り返してしまいます。そして前に説明したことを再び持ち出して最初から説明してしまいます。

近年、職場内のコミュニケーションギャップが拡大していると言われています。コミュニケーションギャップとは、本来伝わっていなければいけないことが伝わっていなかったり、誤解して伝わってしまうこと。

このようなギャップが生まれている背景には、急速な社会の変化があります。これまでの常識が通用しなくなり、日々新しい常識が生まれている中で、世代間の価値観の違いが際立ってきたことのあらわれでもあります。

それとともに気になるのは、スマートフォンやデジタル機器など、人間の記憶を補完するデバイスが普及したことで、脳のワーキングメモリーと言われる領域の機能が低下している人が増えていることです。単純なことでも記憶に留まらず、若い頃から忘れっぽい人が増えています。

こうしたことから部下とのコミュニケーションに不安を感じている上司が増えており、その結果、指示もくどくなってしまうのです。

この場合の対策としては、上司が同じ話をし始めたときに、「そこは先日のご説明で理解しているつもりです」と、こちらが理解していることを伝えること。それで上司は安心して別の話題に移るか、話を終えることができるようになります。