心筋梗塞のリスクを低下させる働きがある

そこで今度は、人間のデータで分析してみました。私たちが、これまで世界中で調べてきたデータを見ると、「男女不平等」な病気に「心筋梗塞」があります。心筋梗塞は心臓の血管が動脈硬化で詰まって起きる病気ですが、調査地域の中で最も心筋梗塞死亡率が低い日本でも一番高いスコットランドでも、常に女性の心筋梗塞は男性の3~4割程度しか起こりません。

非常に性差の大きい病気なのです。そのひとつの原因が、動脈硬化を予防する女性ホルモンにあると考えられ、これが女性の平均寿命が男性より長い理由のひとつともいえます。そこで、世界の調査地域での「心筋梗塞の死亡率」と、女性ホルモン様物質である「大豆イソフラボン」の摂取量との関係を調べてみたところ、見事なデータが出ました。

日本や中国など、大豆イソフラボンを多く摂っている国は心筋梗塞死が少なく、摂取が少ない国は心筋梗塞死が多いのです。なぜ、イソフラボンの摂取が多いと、心筋梗塞が少ないのでしょうか。まず、イソフラボンは、血中で女性ホルモン様の働きをし、血管を裏打ちしている内皮細胞の遺伝子に働きかけて一酸化窒素(NO)を作ります。これにより、血管が拡張し、血液もサラサラになって血栓ができにくくなります。

シソの抗酸化作用力でさらに効果的に

家森幸男『80代現役医師夫婦の賢食術』(文春新書)
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ただし、一酸化窒素は非常に不安定なので、体内で活性酸素(ほかの物質を酸化させる力が非常に強い酸素)に出合うと効果が失われてしまいます。ですから、活性酸素を抑える抗酸化栄養素(緑黄色野菜の色素や、ビタミンA、E、Cなど)とイソフラボンを一緒に摂ると最強の働きをしてくれます。

たとえば、貴州省の豆腐料理には「シソ」が添えられているものがあります。シソなどの香味野菜は抗酸化力が非常に高いので、イソフラボン+抗酸化栄養素という黄金ルールにのっとっているわけです。また、イソフラボンには、動脈硬化の原因となる悪玉コレステロール(LDL)を減らす作用もあります。

肝臓の細胞には、LDLのレセプター(受容体)がついていて、これがLDLを取り込むのですが、イソフラボンはこのレセプターを増やし、細胞内への取り込み量を増やすので、血中のLDL値が下がるのです。1999年に、アメリカの食品医薬品局(FDA)も、1日25グラムの大豆たんぱくの摂取が心筋梗塞などのリスクを下げると認めました。そのおかげで、私たちは、世界で大豆を食べていただく介入研究が実施できるようになりました。

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