「公務員の給与を増やせば、景気回復になる」という思考
「民間であろうと公務員であろうと、収入が増えれば消費に結びつくので、景気にはプラスに働く」という意見もある。地方自治体にいくと、県庁や市役所が最大の組織になっていて、その職員の消費が町の景気を支えているという声も聞く。ならば、公務員の給与をどんどん増やせば、景気回復につながり、ひいては民間の所得増にもつながるのだろうか。
どうやら、岸田内閣の考えている好循環には、そうした思考が含まれている。というのも岸田首相は繰り返し「公的セクターの賃上げ」に言及しているからだ。
今年1月23日の国会での施政方針演説ではこう述べている。
「政府は、経済成長のための投資と改革に、全力を挙げます。公的セクターや、政府調達に参加する企業で働く方の賃金を引き上げます」
その後、公務員の給与を引き上げるつもりか、という批判もあってか、「公的セクター」の例としてさかんに介護職員の待遇改善が語られているが、施政方針演説では明らかに公務員の給与を改善し、入札参加企業が利益をあげられるように調達金額などを増やしていくことを明確に述べている。そうした政府の姿勢が公務員のボーナスにも表れたと考えるべきだろう。
8月上旬には「人事院勧告」が待っている
まもなく「人事院勧告」の季節がやってくる。人事院が国家公務員の給与改定について政府に「勧告」し、政府はそれに従って年末の臨時国会で給与法を改正する。その勧告が8月上旬に出されるのだ。
基本は民間給与水準を基準に、増減率を決めることになっているが、比較対象は大企業だ。また、政権の公務員給与に対する姿勢も影響を与えてきた。施政方針演説から給与の増額を訴え、公的セクターの賃上げにまで首相が言及している中で、「公務員寄り」と見られている人事院にとって追い風であることは間違いない。おそらく、物価上昇率を上回る大幅な賃上げを勧告することになるのではないか。
6月16日に岸田内閣が閣議決定した「骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針 2023)」のサブタイトルは「未来への投資の拡大と構造的賃上げの実現」だ。賃上げを最大の課題として取り上げているわけだ。
その中でも、公的セクターについて触れている。「公的セクターの賃上げを進めるに当たり、2022年10月からの処遇改善の効果が現場職員に広く行き渡るようになっているかどうかの検証を行い、経営情報の見える化を進める」と書かれていて、具体的な内容は判然としないが、「公的セクターの賃上げ」を進めることが「所与」となっている。