進行が顕著なのは都心3区と文京区、江東区、品川区
これらの都市では、東京23区がもっとも著しいとはいえ、一様にジェントリフィケーションが進行しているのだが、進行の程度は地域によって異なる。東京23区を例にとると、進行が顕著なのは都心3区と、これに接する文京区、江東区、品川区などであり、顕著でないのは西側の世田谷区、杉並区、練馬区などである。
そこで進行の程度が著しい地域、具体的には1990年から2020年の30年間の資本家階級・新中間階級比率の上昇幅が15%以上だった地域を選んで、住民の意識を分析することにした。住民は、所属階級と居住歴によって4つに分類した。【図表2】は、対極に位置する2つのグループ、ジェントリファイヤー(居住歴10年未満の資本家階級・新中間階級)と、その他旧住民(居住歴10年以上の労働者階級・旧中間階級)を比較したものである。
格差をめぐり政治的対立が生まれている
ジェントリフィケーションが進行した地域では、両者の意識が鋭く対立していることがわかる。ジェントリファイヤーは、格差拡大を容認する傾向が強いのに対して、その他旧住民は格差拡大を拒否する傾向が強い。他方、その他旧住民は、政府の政策は金持ちを優遇しているとみなし、金持ちへの課税を強化して福祉を充実させるべきだと考える傾向が強いが、ジェントリファイヤーはそのような考えに反対する。
格差をめぐって、両者の間に鋭い政治的対立が生まれていることがわかる。このようにジェントリフィケーションが進行する大都市中心部は政治的対立の場、あえていうならば階級闘争の場としての性格を強めている。最近になって流入してきて、格差を肯定し、弱者たちに冷酷な中上層階級と、古くから居住する下層階級の間の対立である。