“自然災害”とまで言われるようになってきた「花粉症」。ヒノキ科、イネ科、ブタクサ属、ヨモギ属、ハンノキ属など原因となる花粉は多く、通年病となっている人も増えている。が、やはり、原因となる花粉で最も多いのは、2月から4月下旬までがもっとも辛い「スギ花粉症」で、花粉症の何と70%を占めている。

そのメカニズム――。体に花粉が入ってくると免疫システムが働く。花粉を異物(抗原)とみなし、それを撃退するための抗体をつくる。この抗体は鼻や目の粘膜の肥満細胞と結びつく。それ以後もどんどん花粉が侵入してくると、抗体と結合した肥満細胞はどんどん増え続ける。そして、ある一定の量になると、バケツから水があふれるように、花粉に反応するようになり、ヒスタミンやロイコトリエンといった物質を放出する。

ヒスタミンは花粉症の4大症状のうち「くしゃみ」「鼻水」「目のかゆみ」を引き起こし、ロイコトリエンは「鼻詰まり」を引き起こす。

根治療法としては減感作療法があるものの、長期間の治療を必要とするため、多くの人は対症療法である薬物療法を選択している。基本治療である薬物療法は多くの薬の登場により、オーダーメード医療が中心。患者が10人いれば10人それぞれ症状が異なるので、より症状に適した治療を行おうというものである。

現在、「鼻アレルギー診療ガイドライン」ができているので、診療では患者自身の自覚症状を聞いてガイドラインにあてはめていく。

たとえば、「くしゃみ」症状を判定するときには、1日にくしゃみをした回数が目安となる。5回までが軽症、10回までが中等症、20回までが重症、21回以上が最重症と判定する。このほかに「鼻をかんだ回数」や「鼻詰まり」の状態でも判定され、総合的に診断される。それによって使う薬も違ってくる。

くしゃみ・鼻水の症状のひどいタイプには抗ヒスタミン薬。数多くの薬があるものの、大きく分けると古いタイプと新しいタイプがある。古いタイプは服用後数10分のうちに効果がでてくるものの、眠気や口の渇きといった副作用がある。一方、新しいタイプは効果に1日程度と時間がかかるものの、副作用があまりない。なかには眠気の副作用がまったくない薬も登場しているので、自動車を運転しなければならない人は、その旨を医師に伝えるべきである。

鼻詰まりには抗ロイコトリエン薬や血管収縮薬。そして、症状が重症、最重症のケースではステロイド薬が選択される。

もちろん、毎日症状が同じではない。だから、「花粉症日記」をつけるのが重要になる。症状の変化に対応して薬も替える必要があるからで、これを行うと、より症状の軽いスギ花粉シーズンを過ごせるはずである。

 

食生活のワンポイント

花粉症対策はマスク、メガネをかけるだけではなく、花粉の飛散の多いときには外出を控える。外出するときは、ツルツルした帽子、コートも必需品。帰宅したら衣服の花粉を払って家に入る。花粉を家に持ち込まないのが鉄則。うがいや洗顔だけではなく、帰宅したら風呂に入るのが一番である。そのうえで、食生活では以下の3点を心がけよう。

(1)禁煙・禁酒!
タバコもお酒も鼻やのどの粘膜をキズつけるため、花粉を排出する繊毛運動が低下してしまう。

(2)バランスのいい食事!
栄養がバランスよくとれる食事を心がけることで、かぜなどを予防できる。かぜをひくと花粉症の症状も悪化する。

(3)規則正しい食事!
1日3度、規則正しく食事をとると、体の抵抗力の低下を防ぐ。もちろん、睡眠も十分に――。