ビタミンD不足は不妊や感染症の重症化にも影響

ビタミンDは骨粗鬆症以外に、男女の生殖機能や不妊との関係についても注目されています。ビタミンDの摂取で、男女ともに性ホルモンの分泌が高まる、妊娠率を含めた体外受精の成績が上昇する、反対に不足すると多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)により不妊の原因になりやすいことなどが、研究で明らかになっています(“Vitamin D and fertility: a systematic review”)。

そのほか、ビタミンDには免疫を調整する役割もあり、感染症に対する防御作用を高めて重症化を防ぐほか、血管の動脈硬化や自己免疫疾患の重症化予防、がんの死亡率が下がるといったこともわかってきました(東京慈恵会医科大学「ビタミンDサプリメントの摂取と癌の死亡率」報道資料)。

ビタミンDを産生しづらくなった現代人の生活

現代人のビタミンD不足が深刻な理由は、大きく2つ考えられます。1つは日光に当たる生活が少なくなったことです。ビタミンDは日光に当たると体内で産生される、特殊なビタミンです。

昔の人は日の出とともに起きて、一日中裸で過ごし、外で狩りや農業をしていました。それに比べて人間が服を着て暮らすようになってからは、生物としてのビタミンD不足のリスクは各段に上がったわけです。

しかも、“日焼け=危ない”という美白信仰によって日焼け止めを塗る生活が当たり前に。紫外線による皮膚への健康被害は、ある程度は注意すべきですが、全身をすみずみまで日焼け止めで覆ってしまうことで、皮膚で産生できるビタミンDが大きく減少したと考えられます。在宅ワークによって日中の外出がさらに減ったことも大きいでしょう。

もう1つは食生活の変化です。ビタミンDは一部の魚やキノコ類に多く含まれています。食事が欧米化したことで、昔の人に比べてこれらの食べ物からビタミンDを摂取する機会が減ったことが考えられます。

キノコ
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実際に今回の研究でも、検出されたのは日光由来もしくは動物性のビタミンDで、シイタケなどのキノコ類に由来するビタミンDはほぼ検出されませんでした。このように現代人の生活そのものが、ビタミンDを充足させる生活とは遠ざかっているといえます。