場を盛り上げるにはどうすればいいのか。NHKエンタープライズの吉田照幸さんは「一般的にすごい人、すごいものを見たら、『ウケ』をとるチャンスだと思ったほうがいい。こうした『絶対的な価値』はみんなが同じようにもっている前提なので、共感によって話に引き込むことができる」という――。

※本稿は、吉田照幸『気のきいた会話ができる人だけが知っていること』(SB新書)の一部を再編集したものです。

東京大学安田講堂、内田祥三(1925年)
東京大学安田講堂、内田祥三(1925年)。(写真=Kakidai/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

「一番」「優秀」「エリート」は笑いの種になる

優秀な人、エリートの人。世間では絶対的な価値がある人やモノも、笑いをとるチャンスになります。

僕は若いころバラエティ番組の前説をしていました。前説は、収録前に番組の説明とともに、観客を盛り上げ、場をあっためる役目を負っています。

とはいえ当時の観客はバイトで来た大学生。番組観覧をバイトにし、いろいろな番組を見ている人たちでした。芸能人が出ても慣れてしまっていて「わぁ~っ」とはなりません。そんな状況の中でも、ディレクターとつながっているインカムからは「もっと盛り上げろ!」と理不尽な指示がきます。

その中でもきつかったのが、落語家が出演する番組でした。今でこそ落語は流行っていて、若い人も見ますが、当時はおじいちゃん・おばあちゃんの愉しみ。大学生を盛り上げるのは、なかなか厳しい状況です。案の定何を言っても盛り上がらない。だけどあるきっかけから盛り上がりはじめました。

みんなが共通にもつ共感によって話に引き込まれる

「今日は大学生の方が多いということですが、青山学院大学の方はいらっしゃいますか?」

ちらほら手が挙がる。

「僕の後輩です。さすが僕に似て美男美女がおそろいです」

軽く笑い。

そして個別に質問。何人かに出身大学を聞いた後に頭のよさそうな人に聞きます。

「どちらの大学からいらっしゃいましたか?」

学生「東京大学です」

「へえー…………嫌いです」

ここで笑いが起きます。

東京大学は誰もが認める日本で一番偏差値の高い学校です。だからいじれます。ただ単に嫌いって言っているわけではないんです。「嫌い」って言いながら、相手を立て、自分を下げています。言っている僕の僻みも垣間見えて、おもしろいわけです。

一般的にすごい人、すごいものを見たら、「ウケ」をとるチャンスだと思ってください。「絶対的な価値」はフリになります。絶対的な価値であるがゆえに、同じ前提に聞く人をのせられるため、共感が生まれます。

例えば、内輪だけで盛り上がることがあります。これは共通の体験があるからこそ、共感して盛り上がるのですよね。「絶対的な価値」はみんなが同じようにもっている前提です。みんなが共通にもつ共感によって話に引き込まれるわけです。

【ポイント】
フリなくして笑いなし。絶対価値をフル活用