年間で2兆円以上を整形に使うアメリカ人たち

豊胸手術を受けた患者の健康被害は90年代に大きな問題となり、患者側が起こした集団訴訟で人工乳房メーカーが数十億ドルの莫大ばくだいな賠償金を支払っている。

こうした問題が起きたにもかかわらず、整形ブームはどんどん過熱していったが、そこで大きな役割を果たしたのがハリウッドのセレブたちだ。彼らは自分の容姿や体型を良くするために積極的に整形を行い、その情報をエンターテイメントやファッション関連のメディアなどで発信したのである。

たとえば、80年代を代表する歌手でアカデミー主演女優賞を獲得した女優のシェールは、豊胸やフェイスリフト、鼻整形、皮膚整形などを受けたことを認めている。現在77歳の彼女は生涯で70万ドル(約9800億円)以上を整形に費やしているとの報道もある。

また、映画『G.I.ジェーン』や『スカーレット・レター』などに主演し、一時はハリウッドナンバーワンの高給取り女優といわれたデミ・ムーアは豊胸からバストアップ、腹部の脂肪吸引、眉毛整形などの他、ダイエットやフィットネスを含めて計50万ドル(約7000万円)を費やしているという。

最近はソーシャルメディアの発達によってセレブのルックスやトレンドなどの情報により速く頻繁にアクセスできるようになり、人々は以前にも増して大きな影響を受けるようになった。

そこで気になるのは一般の米国人が整形にいくらぐらいかけているのかだが、1人当たりの金額は不明だが、米国人全体の支出額は発表されている。

「米国美容形成外科学会(TAS)」によれば、2021年に米国人は美容整形に146億ドル(約2兆440億円)を費やし、そのうち件数が最も多いのは脂肪吸引で49万1098件、次に豊胸36万4753件、タミータック(腹部脂肪切除)24万2939件と続いている。このような整形ブームに押される形でメキシコへ行く米国人が増えているが、実際メキシコではどれくらい安いのか。

メキシコの手術費用が米国より圧倒的に安い理由

メキシコの首都メキシコシティで国内トップレベルの美容外科医を中心に設立された「トップ美容外科医メキシコ(TPSM)」は、メキシコと米国の整形手術の平均費用を比較した一覧表を発表している。

これによると、豊胸手術はメキシコ3200ドル(約44万8000円)、米国9000ドル(約126万円)、フェイスリフト4100ドル(約57万4000円)、1万5000ドル(約210万円)、タミータック3500ドル(約49万円)、9000ドル(約126万円)、脂肪吸引1990ドル(約27万8600円)、7000ドル(約98万円)で、ほとんどの手術の費用は米国の3分の1から4分の1程度になっている。

TPSMはその理由としてメキシコの人件費・不動産価格・薬剤などの安さに加え、米国では高額な医療過誤保険が手術費用を高くしていることをあげている。

メキシコシティ
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