「1作業・1スペースの法則」が脳の集中力を高める
それがわかったのは、脳の特性を発揮できる条件というのは、人それぞれ違うというのに気づいたからです。
脳には、空間と行動をセットで記憶するという特性があります。そして、記憶はその人固有のものです。その人の経験上で「この場所ではこういう作業をする」ことが記憶されていき、その場所にいるだけで脳があらかじめ作業の準備をするようにカスタマイズされていくのです。
ところが、1つひとつの作業をおろそかにして、冒頭で例に挙げたように仕事用のデスクで食事もとるなど同じ場所で違う複数の作業を行うと、脳の準備が追いつかず、混乱してしまいます。作業を変えるたびに慌てて代謝が高められるため、脳の負担が大きくなってしまうのです。
さらに、予定なく高まった代謝は、作業が終わったあとすぐには落ち着きません。この影響で、席についてもなかなか作業に集中できなかったり、作業を終えても不必要な情報をだらだら見てしまったりしてしまうのです。
作業と場所が「要領のいい仕事」を導く
そこで、まずは1つの作業を選び、その作業だけを行う場所を設定してみましょう。
たとえば、仕事用の席を決めたら、その場所では、スマホを見たり、飲み食いをしたりすることは避けます。席を立ってスマホを見て、なにも持たずに席に戻る。こうすることで、あっさりと作業に集中することができます。
1つの作業は、1つの場所で行う。
これだけで余計な情報に振り回されず、高い集中力を維持できるはずです。
他人と比べたり、一度にたくさんの仕事をしようとしたりするのではなく、自分なりの作業と場所の設定ができていることが、真の「仕事ができる」「要領がいい」ということ。
その人が培った経験にもとづいて、その人らしい行動をすることが、本当の要領のよさなのです。「会社のデスクについた瞬間に仕事モードに切り替わる」という人は、まさにこれをうまく活用できていると言えます。
「わかっているのにやめられない」を防ぐには
先日、時間にルーズなことで深刻に悩んでいる方が相談に来られました。
「いつも睡眠不足でボーッとしています。原因ははっきりしていて、自分の趣味(アニメの動画を見ること)に熱中しているから。ここまでやったら終わりにしよう、と思っているのに、何度も繰り返しているうちに時間が経っていて、結局深夜まで見てしまうんです。そのせいで遅刻も多く、わかってはいるんですけど……」(30代男性)
わかっているのにやめられない――。
そんなときには、脳の神経伝達物質である「ドーパミン」の特性を活用して、衝動的な欲望を抑える方法が有効です。