「ヤマト運輸の研修映画を作る気はない」
また宣伝展開全体については、映画の宣伝・パブリシティを手がける会社、メイジャーの宣伝プロデューサー、徳山雅也の力を借りた。メイジャーは、東映で配給されるアニメーションの宣伝を手がけてきた会社で、『宇宙戦艦ヤマト』(舛田利雄監督)や『銀河鉄道999』(りんたろう監督)などをヒットさせてきた実績があった。
『魔女の宅急便』以前では、東映の配給だった『風の谷のナウシカ』『天空の城ラピュタ』の宣伝を担当していた。『魔女の宅急便』のヒット以降、ジブリ作品の宣伝に欠かせない存在となり、『ハウルの動く城』まで、東宝配給の作品でも宣伝を担当するようになった。
一方で、ヤマト運輸とのタイアップも良好に機能した。宮﨑は、ヤマト運輸幹部との初会合の席で「ヤマト運輸の新人研修映画を作る気持ちはありません。『宅急便屋さんになって、がんばろう』っていう映画を期待されても、私にはそんなことできませんし、やろうとも思いません。それが私がこの映画を作る条件です」と話したという。
「ジブリ作品を応援するメリット」を前面に押し出した
タイアップは、ヤマト運輸のイメージ広告として展開された。たとえばある広告では「こころを暖かくする宅急便です。」というメインのコピーに、キキとジジがいる映画の一場面を大きくあしらっている。そしてボディーコピーの末尾に「クロネコヤマトはアニメーション映画『魔女の宅急便』を応援しています」と入れ、また広告下には、映画のロゴとヤマト運輸のマークが同じサイズで入っている。
このヤマト運輸とのタイアップの経験が、現在のジブリのタイアップ広告の基本を形づくった。まずその大前提は、直接商品のPRには使わない、ということだ。これは『ラピュタ』の時のタイアップが不発に終わり、企業、作品ともにメリットがなかった反省からきている。そこでジブリは「ジブリ作品を応援していますと知らせることが企業にとってのメリットになります」という姿勢をとり、タイアップ広告は企業のイメージ広告に限ることにした。