畑村洋太郎式文章術

工学院大学教授
東京大学名誉教授
畑村洋太郎

1941年、東京都生まれ。66年日立製作所入社。68年東京大学工学部助手。83年同教授。2001年畑村創造工学研究所開設。著書に『技術の創造と設計』『みる わかる 伝える』ほか。

文章だけでは正確かつわかりやすく伝えることが難しいとき、助けになるのが図や絵、写真といったビジュアルです。

図や絵は、一度に多くの情報量を伝えることができます。先ほど触れた思考展開図は一つの研究テーマを一枚の紙で表現できますが、文章化すると一冊の本でもまだ足りないほどの分量になります。

写真も同じです。一枚の写真に写るものをすべて具体的に文章化しようと思ったら、とてもA4文書一枚では足りない。情報量や具体性では図や絵、写真にはかないません。

ただ、図や絵が文章より優れた伝達手段だと言いたいわけではありません。文章は情報量や具体性で劣りますが、事実を事実として説明するという点では、むしろビジュアルより優れています。たとえば法律の条文を図で伝えるのは非常に難しい。図で大枠を伝えられても、漏れが生じやすく正確さを欠くからです。

相手に正確かつわかりやすく伝えるためには、文章かビジュアルかという二者択一に陥るのではなく、お互いを補完し合うような形で使うことが理想です。

自動車の事故現場を説明するなら、写真で具体的に現場を見せて、「この方向から車が時速○キロで進入した」「目撃者はこの位置にいた」というように文章を書き込んで事実を補足します。こうすると文章とビジュアルの相乗効果で、「1+1」が「2」どころか「5」にも「10」にもなります。

本来、文章と図や絵には等価性があり、量などの制限がなければ、どちらでも情報伝達が可能です。それを踏まえたうえで、相手に伝わりにくい文章は図や絵で、図や絵は文章で補う工夫が必要です。

(村上 敬=構成 相澤 正、熊谷武二=撮影)
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