なにしろ70年も待たされたのだ。5月6日の戴冠式に臨んだチャールズ3世(74)の胸に、感慨と同時に複雑な思いが去来したのは間違いない。母エリザベスの戴冠式が行われた1953年、彼はまだ4歳だった。
前途は厳しい。外からは帝国時代の負の遺産の清算を迫られ、内では実の息子(ヘンリー王子)に家庭内の不和や王室の人種差別的な体質を暴かれて赤っ恥をかいた。
そもそもチャールズ自身がスキャンダルまみれだ。故ダイアナ妃との結婚生活が破綻したのも、カミラ・パーカー・ボウルズ(現王妃)との不倫が原因だった。ついに戴冠となったチャールズの素顔とこれまでの歩みを振り返ってみよう。
若かりし日からの情熱
よく知られているように、チャールズは若い頃から環境問題に取り組んできた。プラスチック製品の使い捨てによる環境汚染の問題に初めて言及したのは1970年のことだ。当時の彼は言っている。「誰もが毎日約900グラムのごみを出している。そしてこの国には5500万の人がいて、自然には分解されないプラスチック容器や使い捨てボトルを使っている。何とかしないと、いずれはごみの山に埋もれてしまう。それくらいは容易に想像できる」
それから50年後の2020年には、こう言った。「(当時は)ああいう発言だけでも変人扱いされた。(チャールズの私邸である)ハイグローブの敷地内にアシ原を利用した汚水処理システムを導入したときも、みんな、あきれていた」
一方、76年には慈善団体の「プリンス・トラスト」を設立し、恵まれない若者の就業・起業を支援してきた。2020年9月時点で、この団体が支援した若者は100万人を超えていた。
昨年、イギリス唯一の黒人向け全国紙「ザ・ボイス」のゲスト編集長に招かれたとき、彼は多様なコミュニティーを支援するプリンス・トラストの役割を自賛して、こう書いた。
「私は76年にプリンス・トラストを立ち上げたが、当時から起業支援の事業をやっていた。そこでは社会から疎外された、主として黒人コミュニティー出身の若者たちに起業してもらい、その優れた能力を発揮できるよう資金援助を行ってきた」
「以来、プリンス・トラストは黒人の人々が経営する多くの企業の成長を助けている。その成功例のいくつかを、今回のザ・ボイス特別版で紹介できることを誇りに思う」