タワマンの修繕費用が高額になる理由

国土交通省が2011年に公表した「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」では20階建て以上の高層マンションの修繕積立金の額は1平方メートルあたり206円としていたが、このガイドラインは2021年に一部改正が施され、1平方メートルあたり338円となんと1.64倍に引き上げられている。

この金額はマンションごとの長期修繕計画に基づいて算出された金額を期間で均等割りにした目安額だ。販売当初の修繕積立基金の違いはあるものの、段階増額積立方式でようやっと基準値に追いつく程度の金額である。

ではどうしてタワーマンションの修繕にはお金がかかるのだろうか。たとえばエレベーター。超高層建物だとエレベーターも高速で上昇する高性能のものが必要となる。分速200メートルのエレベーターなどになるとかなりの高額商品である。

タワーマンションも50階建てともなると200メートル近い高さになるので、1階から最上階に行くまでに1分を切る性能のエレベーターでなければならない。この高速エレベーター、30年を過ぎる頃から更新が始まる。10基から20基も設置されているエレベーターの更新費用は膨大なものとなる。

50階建てのビルのエレベーターのボタン
写真=iStock.com/Semen Salivanchuk
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外壁工事費は通常のマンションの数倍

各住戸に給水するポンプも、高さ200メートルに汲み上げるには高性能のものが求められる。最近では地震対策として非常用発電機なども設置しているがこれらは発電機自体が高額なうえに重油で作動するので重油の備蓄管理も必要となる。

こうした設備は20年から30年で更新時期を迎える。高性能のうえに特注品も多い。部品などの交換にも制約がかかる。更新にあたってはかなり高額となる。

外壁工事も普通のマンションとはケタ違いにお金がかかる。タワーマンションはそもそも足場を組むことができない。屋上からぶら下げるゴンドラやリフトクライマーを設置しての作業となるが、ゴンドラは小さくて作業効率が悪いうえに、高層部を中心に風、雨などの気象条件の影響を受けやすく、通常のマンションの工事に比べ工期が3倍以上かかるとも言われている。工事費は本格的な修繕ともなれば通常のマンションの数倍もかかる。