給料を決めるのは「個人の能力」より「勤める会社」

もちろん、IT業界のように、有しているスキルで年収が大きく変わるような業界もあります。また、営業会社のように販売量によるコミッションが給与に大きく影響する会社もあるでしょう。

しかし、新卒を総合職採用している会社の大半はメンバーシップ型であり、それぞれの会社でのそれぞれの人事評価制度が組まれているため、結果的に「人事評価制度的に給与水準の高い会社に入れるか(=メンバーになれるか)」のほうが、労働者の賃金に大きな影響を及ぼしているのが実態です。

転職を経験した方ならばおわかりかと思いますが、ある能力を持った人でも、別の会社に転職しただけで、給料が上がったり下がったりすることは普通にありますよね。会社員の給料は、個人の能力以上に勤める会社のビジネスモデル、そしてそこで導き出される人事評価制度によって決められているのです。

「給与水準の高い会社に入れるかどうか」と学歴は切り離して考えられるものではありません。その点を踏まえれば、先ほどのランキングは、当然の結果といえるでしょう。

採用面接
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インターネットの普及で採用活動が変化

「より上位の大学を卒業したほうが、就職先を選びやすい。高収入の企業に就職しやすい」。この傾向に拍車をかけたのが、インターネットの普及による「公募制」の就活です。実は先ほどの「上位校卒→高給取り」の関係性が表立ってきたのは、ここ十数年の話です。

インターネットが普及する以前は、企業はそれぞれ「採用ターゲット校」を定め、「積極的に採用したい大学」と「その学生」に向けて選考案内を送付したりして採用活動を行なっていました。

そのため、多くの学生は、「選考案内が送られてきた学生」と戦うだけで内定をつかむことができました。しかし今は、条件を満たす人ならば誰でも応募できてしまうため、自分より上位の大学出身者と競わなければならなくなってしまっています。

これによって「選考倍率100倍超が当たり前」という大企業が続出したことは拙著『子どもを一流ホワイト企業に内定させる方法』で記載した通りです。

さらに、インターネット普及前は、「採用ターゲット校」が表に出ることはなく、「A社はW大学の学生ばかり採用している」などの情報は内部の人しか知りませんでした。それが、「どうもA社はW大学以上の学歴の学生ばかり採用しているようだ」ということが明るみに出てしまったのです。

結果として、早い段階で大学名を見て特定の学歴以下の学生は説明会に参加させない、エントリーシートで落とすなどの措置(学歴フィルター)が起こり、社会問題となりました。

そうした問題を経て、現在では、「書類時点では出身大学は見ない」と宣言する企業、応募書類に出身校を書かせない企業は増えましたが、それで採用される学生の幅が劇的に変わった、という話はあまり聞こえてきません。多くの企業では、採用する学生の出身大学には偏りが残ったままになっているのです。