もやもやを抱えたまま帰国した08年、英語でリーダーシップ教育を行うまったく新しい全寮制高校の設立構想を聞かされ、設立準備財団の代表者に就任。以来、資金確保や認可の取得、優秀な教師陣のスカウトなど険しい道を走り続けている。
その学校、インターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢(ISAK)は14年9月に開校を予定している。国内のほかアジア・太平洋各国から生徒を集め、真に国際感覚を備えたリーダーの育成を目指す。奨学金制度を充実し、とくに富裕ではない層からも生徒を受け入れる構想だ。
準備段階から理念への共鳴者が増え続け、出資者だけではなく設立準備に関わるボランティアスタッフもかなりの数に達した。バイリンガルが条件であり、ハードルが高い仕事だが、高学歴の主婦ら150人ほどがすでに登録。現在は「希望者を基本的にお断りしている」状況だ。
小林は20年の教育について、どのようなビジョンを持っているのか。
「選択肢が増えると思います。大学も高校・中学も、偏差値ではなく、やりたいことで学校を選ぶようになる。シンボリックにいうとそういうことです。ISAKはその先陣を切っているつもりですが、同じように『自分たちの価値観で学校をつくろう』という動きが活発になるでしょう。たとえば伝統工芸とクールジャパン的なデザインとを結び付けて学べるような学校ができるかもしれません。それともう一つ、日本という選択肢を取り払って進学先を選ぶ人が増えると私は見ています」
財政危機や人口減少の足音を聞きつつ、それでものんびりと湯につかっているのがいまの日本人だが、15年ごろには転機がくると小林は見る。ただし、旧来の秩序はひっくり返るが、それはむしろ生きやすい社会ではないかと指摘する。
「トラディショナルな社会の中で私は女性として気楽に生きてきましたが、これからは男性も『一家の大黒柱として絶対に稼がなくてはならない』というようなプレッシャーから解放されます。男女を問わずフレキシブルに生きていける社会になると思います。もちろん、その裏側では『自分力』が絶対に必要になりますが」