日本の国民負担率はほぼ5割で推移している。ジャーナリストの山田順さんは「国の財政赤字を加えた本当の国民負担率は61.1%に上り、スウェーデンより高い。しかし、複雑な税金制度や原生徴収制度などのせいで、国民が自身の税負担に気づきにくくなっている」という――。

※本稿は、山田順『日本経済の壁』(MdN新書)の一部を再編集したものです。

税金の文字のブロック
写真=iStock.com/Dilok Klaisataporn
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現代に復活した江戸時代の「五公五民」

2023年2月21日、財務省が2022年度の「国民負担率」が47.5%になる見込みだと発表すると、SNSは大騒ぎになった。

47.5%はほぼ5割。つまり、所得の半分を国に持っていかれることに、悲鳴と怨嗟えんさの声が上がったのである。そして、ツイッターでは「五公五民」がトレンド入りした。

「五公五民」は、江戸時代の年貢率を表した言葉で、年貢米の半分を領主が取るので、残りの半分しか農民の手元に残らないことを指す。江戸時代初期には「四公六民」だったが、八代将軍の徳川吉宗によって引き上げられた。これにより、大飢饉に見舞われた享保きょうほうから天明年間には、「百姓一揆」が続発した。

SNSの投稿では、《令和の時代に五公五民。江戸時代とどっちがマシか》《五公五民だと、一揆起こさないとあかんレベル》《防衛費倍増になると、六公四民か七公三民になりそう》などが、一気に拡散した。

日本の国民負担率は本当に高いのか

「国民負担率」というのは、国全体の収入である「国民所得」(NI:National Income)に対して、税金や健康保険料などの社会保険負担が、どれくらいの比率になっているかを表した数字だ。国民負担率は、税金や社会保障負担の合計を、個人や企業が稼いだ国民所得で割ることで求められる。

国民負担率は財務省が毎年公表しているもので、ここ数年ほぼ同じ率であり、2022年になって「五公五民」になったわけではない。

それでは、日本の国民負担率47.5%(実績見込み)は、国際的に見て高いのだろうか? 財務省のHPに国民負担率の国際比較のグラフと表がある(図表1参照)。

国民負担率の国際比較
出所=『日本経済の壁

図表1には、アメリカ32.4%、英国46.5%、ドイツ54.9%、スウェーデン56.4%、フランス67.1%の5カ国しか示されていないので、以下、主要国をもう少し加えてみる。韓国40.1%、スペイン47.3%、イタリア60.0%、ノルウェー54.0%、フィンランド61.5%、オランダ54.4%、オーストラリア34.5%、カナダ47.5%。

中国、東南アジア諸国、インドに関しては、財務省HPに統計がない。また、各国とも税制も社会保障システムも違うので断じることはできないが、一見では日本はけっして高いとは言えない。とくに、韓国やアメリカなどよりは高いが、欧州諸国(とくに北欧諸国)に比べたら低いのだから、怨嗟の声が上がるのはおかしいと思える。