※本稿は、髙橋洋一『増税とインフレの真実』(秀和システム)の一部を再編集したものです。
「インフレはイヤ」「でも給料上げろ」は矛盾
2022年から、たくさんの商品が次々と値上がりしている。一般家庭のお財布事情に打撃を与える事態だったことは間違いない。
もっとも、値上がりそのものは、経済学的に見ればあくまで妥当なものだった。
どういうことかというと、コロナ禍において、経済活動はずっと押さえつけられてきた。人々は長い期間、家にこもって過ごしたため、バスの便数が減らされた。旅行にも行けず、航空会社は便を減らさざるを得なかった。
しかし、ワクチン接種の広まりもあって、行動規制も次第に緩和されていった。ポストコロナで経済はじわじわと戻っていったのである。
コロナ前ほどではないにしろ、出かけたり、会食したり、打合せや会議を対面でもできるようになった。
人が動けばエネルギーの消費が増えるから、ガソリンが値上がりした。
商品がたくさん売れるようになり、価格も上がった。
停滞していた経済活動が活発化していく中で、物の値段が上がっていくのは普通のことだ。
しかし、一連の流れについての説明はされず、ただ「物の値段が上がった」ことだけがフォーカスされていった。ほんの一部だけを切り取って、全体を見ている気になっている人が多すぎた。
2022年はロシアのウクライナ侵攻によって、燃料や資源、食料品(小麦製品)など、種類によっては入手が難しくなるものもあった。これが原因でさらに値上がりする例もあり、より厳しい状況になったという側面もあっただろう。
ただ、それまでは「デフレは問題だ」と言っていたのに、ちょっとでも何かが値上がりすると「庶民に大打撃」と大騒ぎしてみせるマスコミにはうんざりしたものだ。
インフレにならないと給料は上がらない
そもそも、物の値段が上がらないことには、給料も上がらないことをご存知だろうか。
物価上昇が賃上げに反映されるまでに多少時間はかかるが、物価の上昇と給料の上昇は、基本的にパラレルなのだ。
だから、2つに関する情報は関連づけて報道しなければ、正しいことは伝わらないのである。
「物価上昇は、けしからん」と怒りながら、「日本だけ給料が上がっていないではないか」では、筋が通らないのだ。「朝から晩まで好き放題に食べまくりながらやせたい」と言っているのと同じだ。