離婚して住む場所もなくなり姉夫婦の家に身を寄せたが…
楓さんが私の元にやってきたのは、夫と離婚をして少し経ったタイミングでした。智也さんは年齢のことも考えて開業医を引退し、勤務医に転身。余生は浮気相手の女性と一緒に暮らしたい、と言われたそうです。
実はその数年前から離婚の相談をされていましたが、楓さんはすでに60代。数年しか社会人経験もなく、手に職があるわけでもありません。さらに家の所有権は海老沢家にあり、離婚してしまえば住む場所すらなくなってしまう。
そこでなんとか思いとどまってもらうよう夫を説得していたと言いますが、いよいよそれも難しくなってきたので離婚届に判をした、ということでした。智也さんの浮気が原因の離婚のため慰謝料の請求はできたかもしれませんが、彼女にその気力は残っていないようでした。
その後、楓さんは姉夫婦の元に身を寄せ、彼女が経営する喫茶店でパートをさせてもらっていました。その喫茶店もコロナ禍で営業不振が続き、年内には閉店を予定しています。楓さんの食い扶持はいよいよ年金7万円のみとなる上、いつまでも姉夫婦の家に居候をするわけにもいかず、どうしようもなくなって私の元に来たのです。
医者になった息子からも見放され生活保護に頼る可能性も
ここで疑問に思われる方もいるでしょう。楓さんには手塩にかけて育て上げた立派な医者の息子が2人もいるじゃないか、と。結論から言えば、親子関係は断絶状態で、子どもたちが彼女を助けてくれることはないと言います。
聞けば、あまりに“教育ママ”の度が過ぎたのか、昔から子どもたちとも折り合いが悪かったそうです。夫の智也さんいわく、「あなたのためを思って言ってるの」という楓さんの声かけに、子どもたちはずっと辟易していたとか……。
海老沢家を守るために楓さんが髪を振り乱して取り組んできたことが、子どもたちには大きな負担だったのかもしれません。私も子どもを育てる親として、いろいろ考えさせられます。もしお子さんたちとの関係が良好で、ひとり数万円ずつでも援助をしてもらえたら生活を立て直すことも十分考えられただけに、厳しい現実と言わざるを得ません。