日本人の食生活では乳製品の摂取が少なく、特にカルシウムは多くの人が不足している。ところが、日本人の骨折率は欧米人より低い。東京大学大学院の佐藤隆一郎特任教授は「これは『ジャパニーズ・パラドクス』と呼ばれているが、私は大豆製品のさかんな摂取が骨折率の低さに影響していると考えている」という――。(第2回)
※本稿は、佐藤隆一郎『健康寿命をのばす食べ物の科学』(ちくま新書)の一部を再編集したものです。
日本人の健康寿命を支えている大豆
大豆は畑の肉ともいわれる非常に栄養価の高い食材で、私たちが日常の食生活で口にする醤油、味噌、湯葉、豆腐、油揚げ、納豆、きな粉はすべて大豆製品です。
夏のビールのお供となる枝豆はもともと未成熟の大豆を収穫したものでしたが、現在では未成熟時の収穫に適した品種が栽培されています。もやしは完熟した大豆を発芽させたもので、緑豆を発芽させた緑豆もやしもあります。日本型食生活に不可欠な食材の多くが大豆からつくられており、これが日本人の健康長寿を支えているとも言えます。
畑の肉と称されるゆえんはタンパク質含有量の高さによります(図表1)。
乾燥大豆100g中のタンパク質は33g(33%)で、これは驚くべき数値です。豆類全般が高タンパク質食材かというと必ずしもそうではなく、落花生、そら豆は20%台半ば程度、それ以外の豆類は20%かそれ以下です。大豆のタンパク質含有量は成熟過程に伴って上昇するため、枝豆のタンパク質含有量は12%程度と完熟大豆の3分の1に留まります。ではここで、タンパク質含有量が高いと考えられる動物性食品と比べてみましょう。