変えるべきは意識ではなく、行動

自信がない人は、自分の思い込みを変えようとします。「もっと前向きになろう」「もっと積極的になろう」「もっと自信を持とう」と。

しかし、思い込みはそんなに簡単に変わるものではありません。そういう努力はすべてムダとは言いませんが、思い込みを変えようとしても変わらないと思います。

それよりも大切なのは、まず行動を変えること。

行動を変えれば、思い込みのほうも、行動に合わせて変わってくるものです。思い込みを変えるから行動も変わるのではなくて、行動を変えるから思い込みも変わるのです。

白いチョークでHOME WORKと書かれた黒板
写真=iStock.com/canbedone
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行動を変えれば自信がつく

スタンフォード大学のマイケル・ニューマンは、人前でしゃべれないとか、パーティに参加できないとか、公共の場所で食事をするのが苦手、といった症状を示す社交不安障害と診断された36名に実験参加を求めました。

普通、カウンセリングやセラピーでは、悩みの相談を聞きながら、本人の思い込みを変えていこうとするものですが、ニューマンは違いました。純粋に行動だけを変えるように指示したのです。

ニューマンは、毎回のセッションで、まず本人に「これならなんとかできる」という行動を決めてもらいました。参加者は、それを宿題とし、翌週のセッションまでにやってくるのです。うまく宿題をクリアできたら、翌週にはまた別の行動的な宿題を出す、ということをニューマンはくり返しました。

たとえば、「1日に3人の人に挨拶をする」とか、「道に迷ったふりをして、知らない人に道を尋ねてみる」といった宿題を決めて、それを実行するのです。

ニューマンは8週間のセッションをおこなったのですが、行動を変えるようにすると、参加者たちの思い込みも変わってくることがわかりました。「自分はシャイだ」と思い込んでいた人も、積極的に人に話しかける宿題をこなすうちに、「けっこう社交的になれるものだな」と気づき、本人の思い込みも変わってきたのです。

読者のみなさんも、思い込みを変えようとするのをやめましょう。

それよりも行動を変えたほうが、絶対に自信はつきます。そして、行動を変えれば、しみついた思い込みも変わってくるものです。

「こうすれば自信がつきそう」と思うような宿題を、自分なりに決めてください。その際には、行動として、実践できるような形で決めなければなりません。「勇気を出す」といった抽象的な宿題にしてしまうと、いったい何を、どうすればいいのかわかりませんので、もっと具体的に決めなければなりません。「知らない町の駅で降りて探検してみる」「電車の隣に座った人に、『こんにちは』とだけ声をかける」のように、具体的に取り組めるものにしましょう。

毎週、必ず宿題を決めて行動するようにすれば、だいたい2カ月ほどで自信もついてくるでしょう。