ミッションやパーパスは強烈な精神的報酬となる

「僕たちは、自分たちが儲けることしか考えていない同業他社たちからお客さんを救う『世直し』をしているんだよ。そして困った人を助けているんだ」

大真面目な顔をして先輩が語ります。彼は外資系生命保険の営業支社長。一杯酒が入り、ボルテージが上がってから彼の話は止まりません。どれだけ今の仕事にやりがいがあるか。たくさんのお客様に喜ばれ自分が幸せを感じていること。大真面目な顔で語るのです。

この場面は、仕事とは関係ないプライベートな食事の場面です。しかし彼は後輩である私に熱を込めて仕事のことを語るのです。

チームが人々の役に立っている。自分たちは世の中から求められている。

その実感を持てたとき、チームのメンバーは恐ろしいほどの力を発揮します。

逆に自分たちは人々の役に立っていない。自分たちは世の中から求められていない、と感じたならば……。どんなに高い給料をもらっていても心からやる気を出すことは決してないでしょう。

チームの存在意義であるミッションやパーパスは強烈な精神的報酬となるのです。

メンバーにチームの存在意義を語り続けること

かつてリクルート社で求人広告の新人営業だったころ、私は営業の仕事が「世の中から邪魔者扱いされる最悪の仕事」だと感じ、毎日会社を辞めたいと思っていたものです。

なぜならば、一日に100件も200件も電話をかけ、飛び込み営業をしていたときのお客様の反応が冷たかったからです。「忙しいのに邪魔邪魔!」「またリクルート? 要らない、要らない!」と冷たい扱いを受けた私は毎日の仕事が辛く苦しく感じられました。

しかしお客様の一言を機に世界が変わりました。

「リクルートさんのお陰で素晴らしい人が入ってくれたよ。彼1人だけで会社が見違えるように変わった。高いと思った広告費も安かった。どうもありがとう!」。

私の仕事は世の中の役に立っているんだ。そう信じることができたときに、体中に感動が稲妻のように走ったのを今も覚えています。

メンバーにチームの存在意義を語り続けること。リーダーの大切な大切な仕事なのです。

参加型で巻き込み内発的モチベーションを高める

社会心理学者エドワード・デシは、動機づけを2つに分けました。

1つは、賞罰・アメとムチにより外から動機づける外発的動機づけ。もう1つは、仕事自体がおもしろい、と感じさせたときに起きる内発的動機づけです。

そして、より本質的な動機づけである内発的動機づけが起きる3つの要因は「自己決定性」「有能性」「対人関係性」である、と明らかにしました。

メンバーにチーム運営へ参加する機会を与え、参加型リーダーシップを発揮させるとメンバーはこの3つともが手に入れられる。

意思決定に関与でき、有能感を覚えられ、信頼関係も高まる。つまり、参加型で巻き込むことは必然的に内発的モチベーションを高めることにつながるのです。