「解決策」よりも大事なこと

余談ながら、世の中には、課題が特定されていないのに打ち手(カサ)を「ソリューション」と称して提案したがるコンサルタントや企業が少なからず存在します。

「ソリューション」を売りたい気持ちが前のめりになりすぎて、本来そのソリューションで解決すべき問題を顧客としっかり合意するプロセスが不十分なのです。

顧客の課題に十分に向き合わず、「この製品を採用すれば○○ができるようになります」とか「このソリューションを導入すれば○○が改革できます」などと勧め、自社のソリューションを売り込もうとするビジネスがまかり通っています。

しかし、提案される側にしてみれば、自分が何に困っているのかをよく理解していない人から、課題特定の欠落した「カサ思考」の提案をされても腹落ち感がありません。

「空に雨雲が多い」ということは、「雨が降りそう」なので困る。そういう問題があるからこそ、「傘を持っていく」という打ち手が意味を持つのであって、雨雲が多くなく、雨も降りそうにないのに、「傘を持っていきましょう」と押しつけがましく言われても、たいていの人は腑に落ちないでしょう。

不審な提案もなぜか納得する

「ソラ・アメ・カサ」は、本書のテーマであるフィードバックを抜きにしても、ビジネスパーソンにとっては大変に有益なフレームワークなので、理解を深めるためにさらに追加でたとえ話をしましょう。

あなたが体調が優れず医者に行ったとします。医者が十分な検査もせずに「この100万円の治療法を受けてください。そうすれば、あなたは健康になります」と言われても、不審に思ってしまうでしょう。これが「カサ思考」です。

では「【アメ】あなたは○○の病に罹かっており、余命わずかです。だから、【カサ】高額ですが100万円の治療法を受けてください」と言われたらどうでしょう。

医師と患者
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです

「アメ=余命わずかの病」が明示されているので「カサ思考」よりははるかにましです。しかし「本当にその病なのか」と疑問に思うはずです。

ではさらに、「【ソラ】血液検査の結果、○○の値が基準値をはるかに超えていました。加えて、精密検査でCTを撮ったところ○○の結果が出ました。【アメ】これは○○の病に罹かっているということです。残念ながら余命わずかです。だから、【カサ】高額ですが100万円の治療法を受けてください」と言われたらどうでしょう。

検査結果という事実、すなわち「ソラ」が示されています。そして、そのデータから余命わずかな病であるという「アメ」が特定されました。

そのうえで提示された100万円の治療法という「カサ」には強い納得感があります。

このようにフィードバックに限らず、営業提案やプレゼンテーションをする際には、自社が持っているソリューションや製品をアピールしたい気持ちをぐっと抑えて、「ソラ・アメ・カサ」の順序で説明するようにしてみてください。

手間はかかりますが、相手の納得感は飛躍的に高まるはずです。