組織に頼らない道もあるが、日本ではコストが高すぎる

では、あなたはどうすべきか。それには独立起業、もしくはフリーランスといった組織に頼らない道もある。しかし、時代が変わってもいまだに日本で起業するというハードルは高い。

私財を投じて、さらには(見直しがされるようにはなったが)個人保証をして銀行から融資を受けて業を起こしても成功する保証はない。たとえ首尾よく投資を得ることができても、今度は投資ファンドからの厳しい業績チェックが入るし、投資額が大きい場合は取締役を送り込まれて経営に口を出されることも多い。

後述の「モーニングピッチ」など大企業とのマッチングも行われるようになってだいぶ環境は整備されたとはいえ、米国、中国をはじめとする海外との環境の彼我の差は大きい。何より、失敗した場合のコストが日本の環境では圧倒的に高く、いまだに失敗者のレッテルを貼られてしまい、次、がなくなることも多い。

だから、起業する比率は圧倒的に低く、大半の学生が新卒で企業に入社し、そして転職はしても起業するという道は選ばない。

企業で働くとしても起業家マインドは必要

このような日本の環境でも有効な働き方が「会社を利用して起業家のように働く」という道だ。私はこうした働き方について、『起業家のように企業で働く 令和版』(クロスメディア・パブリッシング)という本を2019年に出した(初版本は2013年)。

資料を広げ打ち合わせをする2人のビジネスパーソン
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従来の会社での働き方は、社命に従う、すなわち会社の配属、異動、上司の指示、これらに対してたとえ自身の意向に沿わないものであっても、受け入れて奉公するという働き方が、「サラリーマン」としての働き方の王道だった。それに逆らうことはすなわち、裏切り者としてその組織にはいられない、少なくとも本流から外され左遷させられる、などという扱いを受けることも多かった。

これが、1990年代半ばくらいまでの働き方であった。ところが、その後、会社にいながら会社を利用して起業家のように働くというスタイルを実践する人たちが増えていった。

そのため、筆者がベンチャーサポートを始めた1990年代と比べると、いわゆる起業家と企業で起業家のように働く人との働くスタイルの差は急速に埋まってきた。つまり、起業家マインドは企業で働くにしても必要だということだ。