会社の「越境教育」は千載一遇のチャンス

とはいえ、「失敗を経験しろ」といっても、わざわざ挫折を味わいたい人などいません。出世街道に乗り始めた管理職に今さら「失敗」をさせる企業もないでしょう。ならば、できるだけ若いうちに、日頃の業務とは異なる環境・立場に身を置いて、強制的に「経験」を積むしかありません。それを可能にするのが、社外出向などの「越境教育」です。

「越境教育」の良いところは、「失敗や挫折」を経験できること、そして「多様な価値観・視点」が生まれることです。

どの会社でも、その組織なりの常識・非常識があります。社内で共通の価値観や仕事のやり方もあるでしょう。でも、それらは一歩その組織を離れれば、まったく通用しなくなります。上下関係が厳密な組織もあれば、フラットな企業もあります。仕事のやり方も千差万別です。「自分たちとは違う文化がある」ことを知ることこそ、多様性を知る第一歩。目からうろこの体験を、ぜひ若いうちに味わってほしいのです。

自分は本当に、社外で通用するのか?

「思った以上に、自分は外では通用しない」と痛感するだけでも、外に出る価値は十分にあります。「俺って結構仕事できる」と慢心していた人が、実は「その組織のシステムの恩恵にあずかっているだけ」だったり、「単に会社の名刺で仕事ができていただけ」だったりすることってありますよね。

オフィスでストレスを感じるビジネスウーマンのシルエット。
写真=iStock.com/kieferpix
※写真はイメージです

「これまでうまくいっていたのは、個人の能力ではなく、単純に企業の看板あってのことだった」と気づくのは、結構きついものがあります。でも、その事実を知れただけでも儲けもの。

最近は、NTT東日本が社内研修制度として、自分の好きな会社に1年間研修に行くというユニークな取り組みを始めています(みらいワークスも2022年から、1名来てもらっています)。1、2年期間を決めて、地方自治体に出向する仕組みを取り入れる民間企業もあります。あるいは、同じ社内でも期間限定で、まったく異なる部署に“出向”する、“副業”をできるなどの仕組みを取り入れる企業もあります。こうした試みがどんどん広まればいいと思っています。