2006年に開示が始まったデンマークではどうなったか

実は、デンマークでは日本よりもかなり早く、2006年から男女賃金差の開示が義務付けられている。このデータを用いた学術研究から、男女賃金格差の是正手段について考察してみよう。2006年にデンマークで法改正が行われた。この法改正では、従業員35人以上の企業に対して、性別に分類した給与データ格差(個人の匿名性が保護されている状態)を報告することが義務付けられた。日本よりも、はるかに対象企業が多い開示義務化である。ファイナンス分野の研究(*1)では2003年から2008年のデータを対象に、この制度による「男女賃金格差への影響」と「企業価値」への因果関係を検証している。

賃金に影響を与える要因は業種、企業タイプ、労働者タイプなど無数に存在する。そこで、この論文では、計量経済学の手法を用いて、そうした要因を調整して、可能な限り「男女賃金格差」と「男女賃金格差」「企業価値」への因果関係を検証している。具体的には、法改正導入前に従業員数35~50人の企業で働く従業員グループと、20~34人の企業で働く従業員グループの差に着目して分析を行っている。

ミーティング中のチーム
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賃金格差は法改正前から13%も縮小したが…

この2グループを比較しているのは、従業員35人近辺の企業群では、本来は企業同士で大きく性質が違わないはずなのに、法改正が直接的な原因となって大きな変化が起きている可能性があるからだ。そして、これらの企業グループの業種、企業規模、個人特性(年齢、職歴等)も考慮して因果関係の検証をしている。

検証した結果は……男女間賃金格差は、法改正前の平均値から、開示義務化の対象になった企業において13%も(!)縮小したのだ。やはり開示義務付けによる賃金格差への効果はあったんだ! と喜びたいところなのだが……。