「お母さん、痛い! 助けて!」

娘のオルガは60~70メートルほど逃げたが、そこでヒグマに追いつかれた。ヒグマはオルガの足をつかみ、彼女は悲鳴を上げて助けを求めた。

しかし周りには誰もいない。そこでオルガは携帯電話で母親に電話し、こう伝えた。

「お母さん、ヒグマが私を食べている! お母さん、痛い! 助けて!」

ヒグマに襲われたと叫ぶ娘の声を聞いて、母親は最初、冗談を言っていると思った。しかし、電話から娘の声のほかに、獣のうなり声や、むさぼり食う音まで聞こえてきて、ようやく冗談ではないことに気づき、恐怖と愛する我が子を助けることができない絶望感に襲われた。

電話をしながら泣いている女性
写真=iStock.com/RapidEye
「お母さん、ヒグマが私を食べている!」(※写真はイメージです)

電話は1時間も続いた

オルガと母親の電話はそれから1時間も続いたという。人は極限状態になると自身の母親に助けを求めるものなのだろう。オルガは母親に、ヒグマが今彼女を食べていると叫び続けた。

オルガによると、3匹の仔熊も「食事」に加わっていたという。

約1時間後、オルガはとうとう「もはや痛みを感じなくなった」と話した。

「お母さん、色々とごめんね。許してね。大好き」

最後にその言葉を残し、オルガからの電話は途絶えた。