ペトロパブロフスク近郊は「危険地域」
以上が大まかな事件の経過だ。
この事件が起こったペトロパブロフスク近郊は、人間がヒグマに喰われる事件が数年おきに発生する「危険地域」である。
2008年5月には、ペトロパブロフスク市内の墓地が何者かに荒らされる事件が起きた。
墓地に訪れた住民が、「最近埋葬された墓が暴かれ、遺骨が散らばっているのを発見した」と訴えたのだが、どうやらこれも熊の仕業だったらしい。
事件を起こした加害熊は無事逃げおおせたと思われる(参考:https://vostokmedia.com/news/2008-05-23/medved-lyudoed-razoryaet-kladbische-v-ust-hayryuzove-koryakiya-613986)。
2014年6月には、やはりペトロパブロフスク近郊のレスノイ村で、地元住民がヒグマに引き裂かれ、他1名が負傷した。
さらにその3日前にも、近郊のソスノフカ村で女性がヒグマに襲われ、身体のほとんどが喰い尽くされた。
加害熊は同村付近の森で射殺された。オスの成獣で痩せており、胃の内容物から女性を襲って喰ったことが判明した。
林業野生生物保護庁の副局長であるウラジミール・ゴルディエンコは、「人間の肉を味わったヒグマは、ほとんどの場合、意図的に人間を狩り始めるので、射殺することが非常に重要だ」と強調した(参考:https://www.interfax-russia.ru/far-east/news/medved-lyudoed-ubit-vozle-kamchatskogo-poselka)。
また、2016年1月に、ペトロパブロフスク近郊のエリゾヴォ近くの高速道路から28キロメートルの地点で、遺体の一部が食害された男性の遺体が発見された。正確な被害日時は不明で、熊狩りが行われていると報じられた(Vostok.Todayより)。
人喰い熊の出現確率は0.1%
一般的にヒグマは寒い地域にいくほど体が大きいとされている。カムチャッカ半島のヒグマは体長3メートル、体重は800キロに達するという。体が大きいから危険とは一概にはいえないが、巨大であるほど襲われた際の対処が難しいのはもちろんである。
また「カムチャッカ半島には約2万頭ものヒグマが生息している。そのうち毎年約20頭が攻撃的であるとして射殺されている」(前掲Igor Kravchuk)という。
したがって、カムチャッカ半島における人喰い熊の出現確率は1000頭に1頭、0.1%と推定される。