2018年にはアメリカとの交流を促進するため、ロシアの人道担当特使を買って出た。ロシア外務省は当時、文化やスポーツ、若者の交流などを強化すべく、セガールが対米交流のプロモーションに携わると説明している。

ルースキー島の海洋水族館にて、ウラジーミル・プーチン大統領とスティーヴン・セガール
ルースキー島の海洋水族館にて、ウラジーミル・プーチン大統領とスティーブン・セガール(写真=ロシア大統領府/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

米ニュースメディアのバズフィードは、プーチンが以前、セガールを米露関係の改善に利用しようと図った経緯があると報じている。カリフォルニア州とアリゾナ州の名誉ロシア領事に任命し、ホワイトハウスとクレムリンの仲を取りもたせる計画だった。

当時のオバマ大統領にとって、この案は寝耳に水だったようだ。米政府高官はバズフィードに対し、「われわれの反応は、『冗談でしょう』というものでした」と語っている。記事はまた、セガールが「格闘家から落ちぶれたアクションヒーローになった」と述べ、プーチンが広告塔に利用するうえで都合のよい存在だったのではないかと指摘している。

「ゼレンスキーが口封じで国民を殺した」とデマを拡散

ロシア依存を高めるセガールは、ウクライナ侵略を援護するかのような発言さえためらわなくなった。

セガールは今年8月9日、親露派が支配するウクライナ・ドネツク州の捕虜収容所を訪れている。収容所は7月末に爆撃されており、米政治専門誌の『ヒル』は現地報道を基に、捕虜53人が死亡したと報じている。ウクライナとロシアの双方が相手の攻撃だと主張している。

現地の爆発跡を視察したセガールは、通常の爆弾ではなく「HIMARS(ハイマース)」が着弾した可能性が高いとの考察を披露。アメリカが提供した高機動ロケット砲システム・ハイマースを使った、ウクライナによる攻撃であると示唆した。

だが、『ヒル』誌によるとこのセガールの見解は、米諜報ちょうほう機関による分析と食い違っている。米側はロシアが現地にハイマースの残骸を持ち込み、ウクライナによる攻撃だと演出する偽装工作を図ったと指摘している。

セガールの口からは、陰謀論まで飛び出した。その主張によれば、被弾地点に収容されていたナチズム信奉者を始末する目的で、ゼレンスキー大統領がハイマースを放ったのだという。軍事ニュースサイトのミリタリー・タイムズによるとセガールは、「興味深いことに、殺害されたナチスのひとりはここ最近でゼレンスキーに関して多くのことを発言しはじめていた」と述べている。