通常国会が1月23日からスタートした。政府は黒田東彦・日銀総裁の後任人事案について2月上旬に国会に提示する方針を示しており、市場は人事の行方を固唾をのんで見守っている。黒田氏の任期は4月8日までだが、雨宮正佳、若田部昌澄の両副総裁については一足早く3月19日に任期満了を迎える。このため黒田氏は副総裁交代のタイミングに合わせ、4月を待たずに退任することで新体制への移行をスムーズにするとの見方も出ている。
前回(1月17~18日)の金融政策決定会合では大きな変化はなく、大規模緩和策の維持を決めた。前々回(2022年12月19~20日)の会合において日銀は長期金利の上限を拡大し、政策修正に踏み切ったことから、市場では日銀が再度、金利を引き上げるのではないかとの観測が高まっている。海外投機筋を中心に日本国債には大量の売りが仕掛けられ、日銀は国債価格を維持するため、連日5兆円近くの大規模な国債買い入れを余儀なくされた。
現状維持を決めた前回の会合では、一連の売り圧力を跳ね返した格好だが、逆に問題を先送りにしたとも言える。それは今後のスケジュールを見るとより鮮明になってくる。
新総裁が受けるプレッシャーは高まった
2月に金融政策決定会合は行われず、次回の会合は3月9~10日の予定である。この時には新総裁人事が決まっているはずなので、黒田氏が大きな決断をするとは考えにくいし、決断すべきでもないだろう。
そうなると、今回の会合で再修正を見送ったことで、必然的に市場の関心は新総裁誕生後の4月下旬の会合に向けられることになる。黒田氏は日程をうまく駆使して逃げ切ったとみることができるし、その分だけ新総裁が受けるプレッシャーはさらに高まったといってよいだろう。
市場の予想どおり、雨宮氏や前副総裁の中曽宏氏が総裁に就任した場合には、大胆な政策変更は打ち出さないものの、着実に大規模緩和路線の修正を進めていく可能性が高い。市場では現時点での適正金利について1%程度とみており、新体制の日銀はどこかのタイミングで金利の上限を1%程度まで引き上げるか、長期金利そのものを操作するイールドカーブ・コントロールと呼ばれる施策を撤廃することが予想される。