「異次元の少子化対策」生みの親
政府は、子育て支援などを一元的に担う「こども家庭庁」を内閣府の外局として2023年4月から設置することを決定している。政府は、同年6月には政策の大枠を示す方針だが、このような状況のなか、年頭の記者会見で岸田首相が「異次元の少子化対策」を掲げたこともあり、その賛否や内容を巡って議論が盛り上がっている。
そもそも、「異次元の少子化対策」という言葉は、拙著『2050 日本再生への25のTODOリスト』講談社(2022年4月発刊)の「あとがき」で初めて利用したものだが、対策を急ぐ理由は何か。その理由は、少子化が急速に進んでいるためだ。1970年代前半に200万人程度であった出生数が、2021年には約81万人に減少している。政府の予測(国立社会保障・人口問題研究所の中位推計)では、2072年に出生数が50万人を割るとされているが、現在のトレンドが継続すると、2031年には出生数が70万人を割り込む可能性もある。その場合、60万人割れは2040年、50万人割れは2052年となる。
出生率の基本方程式
もはや危機的な状態だが、どうすれば、出生数を増やすことができるのか。そのヒントになるのが「出生率の基本方程式」で、「合計特殊出生率=(1-生涯未婚率)×有配偶出生数」という関係式をいう。
この関係式は、簡単に導ける。そもそも、日本では婚外子は約2%しかおらず、このため、合計特殊出生率は、夫婦の完結出生児数(夫婦の最終的な平均出生子ども数)に「有配偶率」(=1-生涯未婚率)を掛けたものにおおむね一致する。夫婦の完結出生児数を「有配偶出生数」と記載するなら、「合計特殊出生率=(1-生涯未婚率)×有配偶出生数」という関係式が成立する。
2021年の合計特殊出生率は1.30だが、例えば、生涯未婚率が35%で、夫婦の完結出生児数が2ならば、出生率の基本方程式により、合計特殊出生率は1.3と計算できる。
厚生労働省「出生動向基本調査」によると、夫婦の完結出生児数は1972年の2.2から2010年の1.96、2015年の1.94までおおむね2で推移してきたことが読み取れる。にもかかわらず、合計特殊出生率が低下しているのは、生涯未婚率が上昇したためだと考えられる。