香港でデモが起きていた理由

香港は1997年にイギリスから中国に返還されました。その後も「一国二制度」で独自の法律が認められてきました。香港は中国の領地になりましたが、アメリカやヨーロッパの国々のルールも存在していたのです。

栗下直也、ニューズウィーク日本版編集部『くらしから世界がわかる 13歳からのニューズウィーク』(CCCメディアハウス)
栗下直也、ニューズウィーク日本版編集部『くらしから世界がわかる 13歳からのニューズウィーク』(CCCメディアハウス)

ところが2020年6月30日、中国は香港の支配を強めるために「香港国家安全維持法」の運用をはじめました。この法律はそれまで約束していた一国二制度で保障された自由を損なうものでした。香港を中国から独立させようとする行いなどが禁じられました。罪に問われると生涯にわたって自由がうばわれる終身刑になる可能性すらあります。

それでも、この支配は香港の市民にとっては受け入れがたいものでした。法律に抗議する大規模なデモが発生しました。市民が警官隊と衝突し、多くの逮捕者が出ました。その後も中国は香港でのデモを厳しく弾圧しています。

中国は香港で自由な意見表明を求める人たちの活動を、抑えこむだけではありません。新疆ウイグル自治区ではウイグル族の人たちの人権を無視した残虐な行為をくり返しています。こうした中国の行動は海外から強く批判されています。そのため、中国が進めている「一帯一路」から離れる国も出てきています。

なぜ電子決済が急速に普及したのか

中国はスマートフォンのアプリで買いものの代金を支払う手段(モバイル決済)が普及しています。都市部では過去3カ月以内にモバイル決済を利用した人が98%に達したという調査もあります。使いかたは簡単です。お店の人がお客さんのスマホに表示されたバーコードを読み取るか、お客さんがお店のQRコードを読み取って金額を入力します。

大型スーパーや交通機関だけでなく、道ばたでモノを売っているお店でもモバイル決済が可能です。財布がなくても不自由しないため、「中国から財布が消える」ともいわれています。

モバイル決済が増えた背景は、中国人がITの技術にくわしかったからではありません。偽札がとても多いにもかかわらず、クレジットカードなど現金以外の支払い手段が整備されていなかったためです。そうしたなか、スマホが普及したことで、偽札対策になるモバイル決済が一気に広がりました。

イラスト=徳永明子
栗下直也、ニューズウィーク日本版編集部『くらしから世界がわかる 13歳からのニューズウィーク』(CCCメディアハウス)より
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