現状でもすでに、急な針路変更に医療関係者らは動揺し、市民は薬も手に入らないなど新たな苦難に直面している。これまではロックダウンによる食糧難や失職、そして長期軟禁によるメンタルの異状が発生していた。ゼロコロナ解除は朗報とも思われたが、急な実施により新たな混乱を生じている状況だ。
医療体制の整備とワクチン接種の普及を待ち、段階的な解除を実行すれば、軟着陸が可能だったことは明らかだ。にもかかわらず拙速な解除に踏み切った現状には、習近平政権の強い焦りが感じられる。
10月13日には北京の大通りで単身、「奴隷でなく市民でありたい」の横断幕を掲げた男が出現。これに感化された国民は過去2カ月間、ビラ配りから暴動まで、異例のペースでデモを展開してきた。
習近平政権は各地で発生する前例のないデモに動揺し、拙速な政策転換に踏み切った可能性があるだろう。だが、逼迫し始めた医療を鑑みれば、この判断が誤っていたことは明らかだ。
人々の不満をかわしたはずが…習近平の大誤算
英テレグラフ紙は、複数の予測モデルによるデータを報じている。それによると、突然のゼロコロナ解除の結果として、中国全土で最大100万人の死者を出すおそれがあるという。感染者数は最大2億8000万人に上る見込みとなっている。
中国政府はこれまで海外産mRNAワクチンを拒絶し、7種の国内産ワクチンに固執してきた。記録の改竄などの不祥事から中国ワクチンに対する国民の不信は根強く、特に高齢者層では接種率が伸び悩む。長らく固持してきたゼロコロナ政策により、自然に免疫を獲得した人々がごく限られるのも痛手だ。
旧正月を皮切りに、圧倒的なペースでの感染拡大が予測される。急な政策転換で民衆の不満をいったんはかわした習近平政権だが、今後1カ月ほどでさらに厳しい事態を迎える公算が高そうだ。