記事によると副所長はまた、国内の感染者数が依然として上昇傾向にあると指摘している。特に北京と四川では、これまでに人口の半数以上が新型コロナウイルスに感染していると推定されているようだ。

一方で中国は国家として、正式に感染増を認めてない。

国家衛生健康委員会が発表する公式データによると、12月1日から16日まででわずか4103人の感染者しか発生していないという。公式発表と政府内部で把握している数字のあいだに、大きな乖離かいりが生じている状態だ。

ロックダウン中の中国・上海で新型コロナのPCR検査をする人たち
写真=iStock.com/Nico de Rouge
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火葬場に長蛇の列、黄色い遺体袋は山積みに…

まるで感染爆発など存在しないかのような政府発表をよそに、現地入りした海外メディアは切迫した状況を目撃している。

米CNNの記者が現地を訪れたところ、火葬場は駐車場にすら入れない車の入場待ちで長蛇の列となり、黄色い遺体袋が保管場所に山積みになっていたという。ある人物はCNNに対し、友人の遺体が病院の床に放置されたままだったと証言している。

CNNは、「中国国営TVはパンデミック中のかなりの期間にわたり、患者であふれかえるアメリカの病院や混雑した火葬場の光景を幾度も取り上げてきた。100万人を超えるアメリカでの死は、西側民主主義の全般的な失敗として描かれてきた」と指摘する。

ところがいまや、状況は完全に逆転した。「前例のない感染の波」が中国を襲っているなか、国営メディアは患者でごった返す病院や人々が押しかける火葬場の情景を報じず、「故意に無視」していると同局は述べている。

米FOXニュースも同様に、火葬場が物語る大量のコロナ死を報じている。北京でも遺体の処理能力をオーバーしており、ある住民は「10日ほど待つように言われました」と語ったという。

米メディア「中国の医療インフラは完全崩壊」

医療システムも限界が近い。FOXニュースは、「中国で進行中のコロナ急増は、同国の医療インフラを完全に崩壊させた」と指摘する。

特に状況が深刻な東北部河北省では、各病院が集中治療室(ICU)の定員を超えて患者を収容しているという。病棟外のベンチや床などに患者を横たえ、治療を行っているケースも存在する模様だ。記事に添えられた写真では、病棟外の床に担架が直接置かれ、患者が手当てを受けている様子を確認できる。

医療機関では治療に必要な資材の供給が追いつかず、医療関係者がいら立ちをあらわにする場面も出ているようだ。AP通信によると河北省タク州市の病院では、次々と到着する救急車を病院職員が語気を強めながら断った。

「ここの廊下には酸素も電気もないんだ!」「酸素も投与できないのに、われわれにどうやって助けろと言うんだ?」「手遅れになりたくなければ、回れ右してさっさと出て行け!」

本来は病院側としても可能な限り患者を治療したいはずだが、無謀なゼロコロナの撤廃に振り回される現場は苦悩を募らせている。