2022年に行われた東京地裁での裁判を傍聴した

2022年1月27日、被告は、東京地裁の813号法廷に姿を見せた。逮捕時の茶髪とは違い、茶色の部分は毛先のみ。腰まで伸びた黒い髪が1年半にもわたる勾留の長さを感じさせた。細身の体にフィットするような黒のパンツスーツ。飲食店のアルバイトの面接にでも向かうような、就活を思わせる服装で、うつむいて少し斜め下を見つめる。

「のんちゃん、ごめんね。ただただ後悔しかない。こんな弱い自分がつらい――」

3歳の長女を置き去りにし、衰弱死させたとして保護責任者遺棄致死罪に問われた母親(26歳)の裁判員裁判を傍聴してきた。裁判長は「悪質かつ身勝手な犯行で、かけがえのない命が奪われた」と懲役8年を言い渡した。

東京地裁の看板
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お菓子とジュースを置いて長女を寝室に閉じ込めた

新型コロナウイルス感染症の第1波が襲った2020年6月、母親は交際中の男性と9日間の鹿児島旅行に出かけ、帰宅すると長女は亡くなっていた。

家を出るとき「のんちゃんが好きなお茶とかジュースとかを7本以上とお菓子」を置いていったという。寝ていた6畳の寝室の電気を消し、カギを閉めてテープで固定、さらにソファーを置いて「台所の包丁を取りに行くと危ないから出ないように」した。のんちゃんのオムツを2枚重ねにしたという。

それより以前、5月に外泊した際も同じようにして出かけたというが、そのとき長女は置いていったものを飲食して、無事だった。6月は、帰ってみると、いつも寝ていたマットレスの上で長女は息絶えていた。発見されたとき、ペットボトルが1本、お菓子も1袋残されていた。必死で心臓マッサージをしたものの脱水と飢えで死亡。ネグレクトの末の出来事。母親は自殺を試みたが、助けられている。