メタバース、自動車、家庭、医療、軍事…
最大の要因は、今後、世界のあらゆる分野で半導体の需要が急速に増えることだ。国家戦略として、半導体の生産、関連部材や製造装置の製造能力をいかに高めるかが問われている。経済の分野ではメタバースの実現に向けた取り組みが進む。それによって仮想現実(VR)や拡張現実(AR)など新しいデジタル技術の実装が進む。ビッグデータの利用も進みデータセンターや、クラウドコンピューティングの利用もさらに増加する。
IoT関連技術の社会実装が進むに伴い自動車の自動運転はもとより、家庭、生産現場、医療、社会インフラ、エネルギー、農林業などあらゆる分野で、多種多様なチップ(ロジックやメモリに加えて、画像処理センサ、マイコン、パワー半導体など)が使われるようになるだろう。
各国の半導体産業の強さが高速通信技術や安全保障・軍事・宇宙開発にも決定的なインパクトを与えるようになるだろう。その状況下、2022年7~9月期、TSMCは世界のファウンドリ市場の56.1%のシェアを手に入れた(トレンドフォースの調査による)。事実上、半導体市場におけるTSMCの一人勝ちは一段と鮮明だ。
国家主導で半導体産業の強化が目指されている
米国やわが国、欧州各国などにとって、台湾や韓国からのチップ調達比率は引き下げなければならない。そのために主要先進国は急速に半導体企業の誘致や、関連産業の育成のための戦略を強化し始めた。共通するのは、民間企業に半導体生産を任せるのではなく、政府が市場に介入して国家全体で半導体産業の強化が目指されている。それは各国が雇用・所得環境の安定と強化を目指すことにもプラスに働く可能性がある。
今のところ、顕著な成果を出しているのは米国だ。その象徴がTSMCによるアリゾナ第2ファブ建設の発表だ。米国は最新鋭ステルス戦闘機F35に搭載される軍事用のチップを含め、TSMCに米国での生産を増やすよう求めてきた。対して、TSMCは米国での半導体生産はコストがかかりすぎるとの立場を貫いた。