2023年10月から始まるインボイス制度に、延期や中止の声が上がっている。ジャーナリストの小川匡則さんは「零細事業者を狙い撃ちにした増税だが、それだけでは済まない。財務省の本当の狙いは、その先の『消費増税』にある」という――。
電卓を使用して計算する男性の手元
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「500万人近くがインボイスの影響を受ける」

「インボイス反対」の声が日増しに高まっている。11月16日には党派を超えて国会議員が集まり「インボイス問題検討・超党派議員連盟」が発足。呼びかけ人代表の立憲民主党・末松義規衆院議員は記者会見で次のように声を張り上げた。

「500万人近くがインボイスの影響を受けると言われている。低所得の一人親方とか個人タクシー、シルバー人材センターの方々など細々とやってきた方がなぜかインボイスを通じて事務的な大きな負担を強いられる。さらには仕入れ税額控除の関係で取引から排除される。こんなバカなことはない。来年の10月から強行するなんてとんでもない」

来年10月から開始される予定となっている「インボイス制度」。しかし、それがどういう制度で、どのような影響を及ぼすかはあまり認識されていない。

インボイス=適格請求書であり、これまでと違い「適格請求書」でなければ仕入税額控除の対象とはならなくなるというのがインボイス制度だ。

事業者が支払う消費税は大まかに「(売り上げ)-(仕入れ)」の付加価値分に対して10%(軽減税率の場合は8%)である。この「仕入れ」に算入するためには従来の請求書とは異なり、インボイスの登録番号など必要事項が記載された適格請求書(インボイス)でなければならないというわけだ。

年間売り上げ300万で、13万6000円の増税に

事業者がこの「インボイス」を発行するには「インボイス事業者」として登録しないといけない。ここでダイレクトに影響を受けるのが課税売上高1000万円以下である消費税の免税事業者だ。主にフリーランスや小規模事業者で課税売上高1000万円以下であれば消費税は免税されているが、インボイス事業者として登録した場合は課税対象となるからだ。

インボイス制度の問題点を国会で取り上げてきた立憲民主党の落合貴之衆院議員は語る。

「インボイス登録事業者からの仕入れでなければ仕入れ控除の対象にならない以上、インボイスに登録していない事業者は取引から排除されてしまうことが懸念されます。一方で、そうした免税事業者がインボイスに登録したら課税対象となり、フリーランスや零細企業に対する事実上の増税となります」

では、たとえば年間の売り上げが300万円のフリーランスがインボイス制度により課税事業者となった場合、どのくらいの税負担増となるのか。

11月2日の衆議院財務金融委員会で国税庁の星屋和彦次長は以下のように述べている。

「フリーランスで働くアニメーターや声優が簡易課税制度により申告する場合のみなし仕入れ率は、50%が適用されます。これを前提といたしまして、年間売り上げが税込み300万円であるアニメーターや声優の消費税および地方消費税を合わせた納税額を機械的に算出いたしますと、約13万6000円でございます」