いま、私立中高一貫校の「部活動」が激震に見舞われている。何が背景にあるのか。進学塾経営者で『令和の中学受験2 志望校選びの参考書』の著者・矢野耕平さんは「教員の労働環境を整備するため、労基署が学校に調査に入るケースが相次いでいることがひとつの原因のようです」という――。
通りを歩くアジアの女子高生。
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部活動運営が崩壊した中高一貫校

いま、首都圏の私立中高一貫校の一部で「部活動問題」が持ち上がっている。端的に言えば「部活動の顧問の配置問題」だ。ある学校を取材しているときに、ひとりの教員がわたしに耳打ちするように教えてくれた。

「2年前くらいから、私立中高に労基(労働基準法)関係の調査がどんどん入るようになりました。初期の頃に調査が入った某私立中高一貫校の教員から話を聞くと、調査以降、その学校では部活動の運営が崩壊してしまったそうです。部活動に教員が本格的に関わろうとすると、フレックスタイムを導入するなどして、勤務体系を大きく変えなければならない。たとえば、ある教員が日曜日の試合に顧問として付き添ったら、その勤務時間の6時間分なり7時間分を平日の勤務時間から削らなければならない。そうすると、授業の担い手がいなくなってしまう。頭の痛い話です」

教員の労働環境の調査は、公立の学校に関しては今夏に文部科学省経由で実施中だが、私立にはエリアごとに設置されている労働基準監督署が担当しているという。労基署はもちろん学校以外の企業などにも調査に入っているが、とりわけ私立中高で労働時間が守られていないところが多いこともあり、詳細な調査をしている。

その結果、一部の学校では憂慮すべき事態が発生している。前出の教員はこうことばを継ぐ。

「授業に穴が空かないようにした結果、部活動の顧問がいなくなってしまうというケースがいくつかの学校で出始めているようです。だから、部活動の“外注”を始める学校が増えているのです。すでに専門の派遣会社もあって、学校にひっきりなしに営業電話がかかってきますよ」