例えば、電気、水など生活インフラの自立。キャンパス内の電力は太陽光発電でまかなわれている。調理には、大型のガスバーナー並みの熱量を持つ2台の集光型ソーラークッカーを活用。飲料水も電動ポンプで井戸から汲み上げている。

シャワーは、太陽熱の温水器を使用。太陽熱は校舎を温める役割も担う。校舎を含め、セクモルスクールの建物はすべて南向きに建てられ、ほとんどが全面ガラス張りだ。そのガラスを透過する太陽光の熱を、ソナムさんが「ヒートバンク」と呼ぶ黒く塗装した土壁に蓄熱する。

セクモルスクールの建物
撮影=齋藤陽道
セクモル オルタナティブスクールの校舎。ほかにホールや居住棟などがある。

ガラス窓から熱を逃がさないため、冬には校舎の南側に透明なビニールの幕を垂らす。これはビニールハウスをイメージするとわかりやすい。屋根や外壁、床下には断熱材としてわらや建築時に発生する木くず、牛糞などを入れている。

学校内に暖房はないが、太陽の光と熱を利用したこの設計で、外がマイナス20度になる冬、校舎内は15度から20度に保たれる。校内の最低気温は、2019年の真冬に記録した「7度」だ。

「この学校の施設はすべて、科学的に太陽光を集めて室内を暖めるように設計されています。基本的には、教科書に載っていることを利用しました。とてもシンプルで、電力もいらないし、汚染もありません。ニューヨークの人々はモダンかもしれませんが、現代の暮らしは石油を燃やしたりして環境に負荷を与えます。私たちは環境にダメージを与えることなく同じように快適な生活をしているから、モダンを超えたかな(笑)」

行き場を失った若者の活力

カリキュラムは、学校内のさまざまな建物、設備、システムを子どもたちが作り、触れ、運用することで学ぶように組まれている。それは子どもたちのためにお膳立てされたものではない。例えば、セクモルの生徒たちは教師の力を借りながら低コストで誰でも作ることができる太陽光温水器を設計、製作し、生活のなかに導入している。

ソナムさん
撮影=齋藤陽道
新しい建物を作る子どもたちの作業を見守るソナムさん。

ソナムさんは、教師たちに「授業の内容を忘れたことを責めて子どもを怒鳴ってはいけない。授業を忘れられない内容にしなさい」と伝えているという。

ユニークなのは、「レスポンシビリティ」というプログラムだ。子どもたちはグループごとに太陽光発電システムの管理・運用、牛や馬の世話、野菜作り、校内の掃除など15個ある役割のなかから6つを選び、それぞれ2カ月間担当する。