単独世帯の増加とは別に、コロナ禍による行動制限や人間関係の疲れなどから、積極的に1人の時間を楽しむ人も増えている。ソロ(単独)で活動する“ソロ活”だ。

代表的なものに「ひとり焼肉」「ひとりカラオケ」「ソロキャンプ」などがあり、家族や仲間と楽しむのが当たり前だったイベントがソロ活になっているのだ。

キャンプ用品市場では、ワークマン、コメリ、ダイソーなどの激安ショップが新規参入し、専門店なら10万円ほどかかりそうな道具や装備が、1万円もあればそろってしまう。気軽にソロ活を始め、自分に向かないと思えば、やめてしまっても惜しくない価格だ。

ディズニーランドを1人でまわる「ひとりディズニー」、高級リムジン車に1人で乗る「ひとりリムジン」といったソロ活もある。せっかくディズニーランドへ出かけても、誰かと一緒だとアトラクションの好みが違うから満喫できないというのだ。関西では、USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)の年間パスポートを買って1人で楽しむ「ひとりUSJ」が人気を集めている。

“ソロ活市場”のキーワードは「パーソナライゼーション」

“ソロ活市場”のキーワードは「パーソナライゼーション」だ。他人に合わせることなく、自分1人の欲求や希望を満たすことが強く意識される。商品やサービスを提供する側は、“マス”の発想ではなく、“パーソナル”の発想に転換することが重要になる。

第一に日々の情報が、個人に最適化されたデジタルサービスによってパーソナライズされている。情報を得るメディアは、若い世代ほどテレビや新聞よりスマホのほうが多い。SNSやニュース配信は、ユーザーの行動履歴などを基にAIがパーソナライズし、レコメンド(おすすめ)される情報を受け取るようになっている。

特に、ファッションや美容品の分野では顕著で、ユーザーが購入時に重視するポイントは「自分に合うか」「私らしいと思えるか」が上位に挙がる。ユーザー一人ひとりに「あなたの髪にぴったりのシャンプー」などのパーソナライズされた商品情報が求められているのだ。従来の「フケが多い人用」「くせ毛用」などのセグメンテーションは、ビジネスの考え方としてもはや崩壊したと見ていい。ビジネススクールでは、セグメンテーションではなく、パーソナライゼーションを教えることになるだろう。

22年8月に米アマゾンや三井物産が、「アットコスメ」を運営するアイスタイルと業務資本提携を結んだのも、同社が登録会員610万人の情報を握っているからだ。パーソナライゼーションでは、狭くて深いマーケット情報こそ価値が高い。個人情報保護の観点から、ウェブサイトへのアクセス情報が残るクッキー(Cookie)が規制強化される動きもある。会員情報のような一人ひとりのデータはさらに価値を高めるはずだ。