母国ロシアがウクライナを侵攻した日

僕がロシアに行ったところで、市役所の手続きもわからなければ、部屋の借り方もわからない。ロシア語の読み書きが苦手な状態では仕事を見つけることも困難だろう。何より日本での生活基盤をすべて投げ捨てるなんてことは、したいとも思わない。とにかく僕はロシアでは生活はできないし、頼るのはやっぱり日本しかない。

日本国籍を取得する必要性を感じ始めた昨年末、ロシアに住む祖父母が新型コロナウイルスに罹患りかんして、相次いで亡くなった。祖父母がいなければ、ロシアに行く理由はない。本格的に帰化の申請をするための準備をしていた今年2月、ロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始した――。

2月24日の朝、テレビをつけると、キーウの空港が爆撃されている映像が流れていた。この日はアレちゃん(編集部註:中庭アレクサンドラさん。小原さんとYouTubeチャンネル「ピロシキーズ」で活動中)の誕生日だったので、マネージャーの家に集まりお祝いをする予定だったが、祝う気になれないというアレちゃんの言葉で誕生日会は中止。僕はマネージャーの家に片付けの手伝いだけしに行った。テレビで流れる映像ではとにかくキーウの空港が爆撃されているという情報だけだったので、街がどうなっているのか、そもそもどのくらい続く見込みのものなのか、訳がわからなかった。

キーウの街にあるライブ配信をしている定点カメラの様子をYouTubeで見たり、知り合いのウクライナ人に連絡をとってみたりしたものの、情報は混乱するばかり。ただそれまでにロシア軍が侵攻するのではという話が盛んに報道されていたので、これが侵攻だということはハッキリとわかっていた。

ロシアによるウクライナ侵攻で破壊された集合住宅
写真=iStock.com/Joel Carillet
※写真はイメージです

SNSに届いた大量のダイレクトメール

SNSを開いてみるとTwitterやInstagramに大量のDM(ダイレクトメール)が届いていて、正直読む気にはなれなかった。お前はロシア人としてこの件についてどう思ってんだ! というような内容のものも多く、これはメディアに出たりYouTubeをやっている者として黙っていたら肯定していると思われるのではないかといてもたってもいられなくなり、そのままマネージャーの家でカメラを回してプーチンを批判した。自分の立場を悪くしないために動画を撮ったんじゃないかという批判も多かったが、結果として僕に続いて戦争にNOの声を上げてくれたロシアの人たちが複数いたから、あのときにカメラを回してよかったと思っている。

まさか東部地域をすっ飛ばし、いきなりキーウを攻撃するなんて! 当時多くの専門家だけでなく、ロシアやウクライナの国民でさえ想定外だったのは言うまでもない。