読書は脳を活性化する

「受験期に、読書なんてしている余裕はありませんよ」というのがその子たちの言い分。決まり文句です。

ですが、成績を上げたくて暗記詰めこみ勉強に必死になればなるほど、主要科目である国語の成績はどんどん下がり、思考力も落ちるので、他教科でもミスが目立って増えてきます。目が生気を失い「どよーん」としてくるのも、こうした子たちの特徴です。

これは、だいたい小6の夏休み以降に、長時間の受験勉強をいられた子がおちいる「落とし穴」で、ひどいケースになると、燃え尽きて中学入学以降に学習意欲を失ってしまう子や、表情を失い廃人のようになる子もいます。

こういう子を、元通りの元気な冴えた子に戻す特効薬が、「読書」と「自然遊び」なのです。

私は脳科学の専門家ではありませんが、読書しているときの脳が、どれほどすごい働きをしているかは教えられなくてもわかります。

目で見た文字情報を、瞬時に映像に変換するだけでもすごいですが、映像に変換するためには、本に書かれている出来事とよく似た「自分の過去の体験」を、膨大な記憶の海の中から、これまた瞬時に引っ張り出さなくてはなりません。

なぜって、私たちは一度も見聞きしたことのないものを脳内で映像化することができないからです。

つまり、私たちは読書をしている間中、自分の記憶を総動員して、絶えず文字情報を映像化し、その映像に音やにおいや味をつけ、手触りを想起して、本を楽しんでいるのです。さらに、その映像を頭の中で映画のように動かしていくことで、書かれていない情報、「行間」までをも洞察力を使って読み解いているのですから、すごいことだと思いませんか。

お子さんの脳に、これだけ高次の働きを一度にさせてくれるものは、「読書」以外にそうそうありません。忙しい受験期だから「読まない」のではなく、暗記詰めこみ勉強に偏りがちな受験期だからこそ、「本」というサプリを脳に与えてあげたほうが、効率的に頭の働きを良くすることができるのです。

また、ちょっと勉強させすぎたなと感じたときは、自然の中へ連れ出して、思いっきり遊ばせてみてください。疲れていた脳と心が活性化し、勉強への意欲を復活させるのに役立ちますよ。

日差しが差し込む部屋で読書をする少女
写真=iStock.com/kohei_hara
※写真はイメージです

「ガリ勉」は創造的・批判的思考力を委縮させる

では、どうして「ガリ勉」すると国語力が落ちるのか? ということも説明しておきましょう。

そもそも進学塾の受験勉強というのは、「いつまでに、どの単元まで」と、がっちりカリキュラムが決まっていて、いちいち子どもに考えさせていたら予定通りに授業が進みません。

そこで、「じっくり深く思考する」ことをいったん停止させて、ひたすら知識とスキルを覚えさせ、効率的に活用させる「暗記訓練」「情報処理訓練」を子どもたちに課すわけです。

ところが、そのような訓練を過度に繰り返しますと、その間ほとんど使われない、子どもの創造的・批判的思考力はものすごい勢いで萎縮していきます。そうなると、要約がまったくできなくなったり、急に作文が書けなくなったりと、国語科では目に見えていろいろな変化が起きてきます。

子どもの脳はまだ成熟しきっていませんから、よく使う反射的な思考回路(データ処理回路)ばかりを、無意識のうちに強化してしまうのだろうと思います。