「ブレない自分軸なんていらない」
周囲に振りまわされないためには、「ブレない自分軸」が必要だといわれることがあります。「信念」「信条」「信じる道」と言い換えてもいいですが、いわゆる自己啓発やコーチングの世界では、この自分軸が「あいまい」ではいけないとされます。
でもわたしは、いつも、「ブレない自分軸なんかいらないよ」とみんなにアドバイスを送っています。
木にたとえると、ブレない自分軸は、いわば一本の大木です。強く頑丈なように見えますが実は案外もろい面があり、嵐などがくるとあっさり倒れることもある。それこそ近年の自然災害では、大木が次々と倒れる光景をニュースなどで見る機会も増えました。
要するに、平時なら信念や「ブレない自分軸」も役に立ちますが、パンデミックのような非常時や先の見えない時代においては、ほとんど耐性がなくて役に立たないのです。
また、いったん倒れてしまうと、ゼロベースからつくり直さなければならず、新たに信念を持つのは容易ではありません。
どれだけブレたって問題ない
それよりもわたしは、「しなやかな自分軸」を持つことをおすすめしています。自分軸を持つのがいけないのではなく、まるで竹のようにしなる、強靭な自分軸を持つのがポイントです。
竹は地中に根をたくさん張り、中は空洞で節目もあるためそう簡単には折れません。大きくしなっても、いつでも元に戻れる強靭さを備えています。実際に、むかしから「地震があったら竹やぶに逃げろ」といわれるほどです。まわりの環境が大きく変化するときは、細くてもしなやかなほうが、強さを発揮できます。
ここでお伝えしたいのは、ブレない自分軸や信念などは必要なく、「どれだけブレてもいい」ということ。
しなやかな自分軸があれば、ブレても自分で元に戻れるし、なにかに振りまわされても簡単には折れません。なんなら、ブレた先で出会ったなにかを、めいっぱい楽しんでもいい。それはそれでいつもとは違った新しい体験を得ることができ、その体験がもっとあなたを強くしなやかにしてくれるでしょう。