※本稿は、土屋裕昭『60分でわかる! インボイス&消費税超入門』(技術評論社)の一部を再編集したものです。
インボイス制度とは何か
2023年10月より消費税に関する新制度「インボイス制度」がスタートする。小規模事業者の「益税」が認められなくなるため、政府の税収は増える一方、これまで免税されてきた個人事業主やフリーランサーはあらたな負担を強いられることになる。本稿では「益税」の仕組みと負担増の中身について解説したい。
消費税の納税額は基本的に「売上時に預かった消費税-仕入(含む経費)にかかった消費税」で計算する。これを「原則課税」といい、計算式のように仕入にかかった消費税を差し引くことを「仕入税額控除」という。インボイス制度はこの仕入税額控除の新しいルールである。
インボイス制度がスタートすると、仕入税額控除を受けるためには、これまでの請求書にあらたな要件を加えた「適格請求書(インボイス)」を仕入先から受け取る必要がある。この適格請求書の発行はインボイス制度へ事前登録した事業者しか行えず、未登録の場合は記載内容の要件を満たしていても、現在の請求書と同じ扱いになる。
つまり、インボイス制度では、現在の書式の請求書を受け取った相手は仕入税額控除を受けられず、その分、消費税の納税額が増えるということだ。
インボイス制度導入は消費税収を増やすため
ちなみに適格請求書の「適格」とは法律で定められた資格(要件)にかなっていることを指す。具体的には、現在の請求書に新たに税率ごとに区分した消費税額等やインボイス事業者へ登録した証しとして「登録番号」の記載などが必要になる。
インボイス制度が導入されることになった最大の理由は、消費税の税収を増やすためだ。そこでターゲットとされているのが、これまで消費税を免税されてきた事業者である。細かな説明は省くが、免税事業者になれるのは、基準期間(2年前など)の課税売上高が一定額以下であるなどの要件を満たしている場合だ。この免税事業者に対して不利なルールを設定し、課税事業者への転換を促すのがインボイス制度の本質といえる。