仮に益税が減る分、価格を上げられたとしても、今度は買手が痛手を被ることになる。反対に価格を維持せざるを得なかったとすれば、益税分の利益の減少により、やがて力尽き、事業の継続を断念せざるを得ないところも出てくるだろう。そうなれば、その仕事を請け負える事業者が減り、買手側の生産性などにも影響が出てくるかもしれない。

業務委託契約の労働者は手取りが減る

また、美容師やマッサージ師、塾講師などは、正社員としてでなく、業務委託契約で働いているケースも見受けられる。善し悪しは別として、事業者からすると、業務委託契約を締結することで、免税事業者の委託者に消費税を支払っても、仕入税額控除を受けられた。実質的な給与(=消費税込み)を多く払いつつ、仕入税額控除により消費税の納税額を減らすことができたわけだ(※その他、諸条件を満たす必要あり)。

土屋裕昭『60分でわかる! インボイス&消費税超入門』(技術評論社)
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ところが、これからは業務委託を受ける側がインボイス制度に登録した課税事業者でなければ、仕入税額控除を受けられなくなる。また、業務委託契約で働く本人も課税事業者となるため、消費税を納める義務が発生する。その分、実質的な給与が減ることになる。この減った分を誰がみるのか。難しい問題である。

さらに、インボイス制度がスタートすると、帳簿の記帳も以前より手間が増える。登録番号の確認なども必要になり、経理業務の負担が増えるのはもちろんのこと、私たち税理士もどこまでを業務の範囲とするのか、あるいは料金をどのように設定していくのか悩みは多い。

インボイス制度の導入後は多くの混乱が予想される。いまから知識を身につけ、しっかりとした準備をして制度の開始に臨むべきだろう。

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