ちゃんと感謝を伝えよう
本稿を読んでいる人の中に、「最近、お母さんが機嫌が悪いけど、更年期かな?」なんて思っている人がいるだろうか。
これまで「いい妻」「いい母」をやってきたお母さんは、自分が何のためにそれをやっているのか、わからなくなる時期がくる。
毎日、朝食、夕食、お弁当を作る、家をきれいにする、洗濯してアイロンをかける……これを20年やってくると、それが当たり前の風景になる。家族はいちいち感謝なんてしない。
「私はちゃんと感謝してる」と思っているかもしれないけど、あなたが見えていて、感謝しているのは、お母さんがやっている100のうちの、せいぜい20だけだ、と思ってみて。
子育てのためには、母親は手を惜しまない。子育てが終わって、子どもが独立し、閉経すると、一気に、家族に尽くす意味がわからなくなってくる。朝から晩まで、家族のために家事して、仕事もして、さまざまな雑用に追われて「私、何やってんだろ」となる。だから、家族の感謝がないことにイラつくし、悲しい。
その年頃の女性のイラつきの原因は、更年期障害と言われているけれど、私からすると、それだけじゃない。脳が生殖期間を終えて、生殖本能が弱くなって、周りから守ってもらう理由がなくなってしまって、「いい人」やっている意味がわからなくなった挙句のクライシスも、相当数含まれているはず。
自分が年配になってくると、あ、お母さん、あれもしてくれたんだ。これもしてくれたんだとわかってくる。
感謝すべきことがわからなかったら、「お母さん、いつも本当にありがとうね」と、まるっと感謝すればいい。
感謝されなくて悲しい女性たちへ
人に感謝されないと思ったとき、それはそこにいる人たちの中で、あなたが誰よりも優秀ということなのだ。みんなが20とか30しか見えていないときに、自分は80とか100が見えているということだから。
私は常々「社会人は、周りからの感謝が足りないと思うようになって、初めて一人前」だと言っている。周りの誰よりも、周りが見えているということだから。
周囲の感謝が足りないことは、プロとして(主婦のプロも含む)、誇りに思っていい。
ちなみに、私は家族に感謝されたくなんかない。
およめちゃんは、私のことを子育てする仲間だと思っているから、「眠くて耐えられな~い」と、私に泣いてる赤ん坊をポンと渡して、寝てしまう。つまり、私が赤ん坊を一緒に育てる仲間だと100%信じているということだ。
「お母さん、すみませんが見てくれませんか」とか「見てくださってありがとうございます」なんて言われたら、寂しくて涙が出ちゃう。それは、子育ての当事者じゃなくて、よその人に言うことばだもの。