【柴山】大臣としては、教員の働き方改革のあり方について中央教育審議会に諮問をさせていただきました。その一環として、まずは労働時間の実態把握と適切な管理をするため、タイムカードやICT(情報通信技術)の活用を図るとか、時間外労働の上限を設けるなどの指針を定める、という流れで給特法の改正を進めたのです。

文科相時代の答弁の様子
画像提供=柴山議員
文科相時代の答弁の様子

【柴山】要は、先生の時間外の労働は先生方の自発的なものという前提を打破し、それは本来的な業務であるときちんと把握し、それを校長なり教育委員会がきちんと管理していく必要がある、という点を文科省として告示もしました。ただ、残念ながらその時点ではまだ残業代を支払うべきというところまでいきませんでしたが。

「校長命令ではない」と残業代が認められず

――給特法をめぐっては、教員による訴訟も起きています。埼玉県の公立小学校の男性教員(63)が、未払い残業代約240万円の支払いを求めた裁判では、一審、二審ともに請求は棄却されました。8月25日の東京高裁判決は、男性の時間外労働はすべて「教員の自発性に基づく業務」であり、校長の命令ではないから残業代は請求できない、と断じています。実態はさまざまな理由で残業せざるを得ないのに、結局給特法は「定額働かせ放題」の根拠になってしまっています。

【柴山】正直あの時点では、法改正と時間外労働の厳密な管理の告示で、先生方の時間外労働も顕著な形で減っていくのではないかと考えていたのです。実際、成果も出ており、例えば2018年度と2021年度の調査を比較してみると、時間外勤務が月45時間以内の教員の割合が、小学校では41%から64%に約23ポイント増え、中学校では28%から47%に約19ポイント増えています。

しかし、逆にいえばそれ以外の教員は相変わらず月45時間を超えているわけですから、やはり現場の方々からすると、給特法をもっと抜本的に改正するべきなのではという声があがってくるのも自然の流れなのかもしれません。